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懐いてる×懐かれてる

「何でここで寝てるんだ」
 俺のとなりに転がっているものを蹴り落としたい衝動に駆られながら
ベッドを抜け出し、冷えた缶ビールを空ける。

 事の始まりは昨日。レイトショーを見た後、独りで楽しく飲んでいた帰り。
 ストーカーのように追いかけてくる足音を撒こうとして約三十分。
 ひたすら逃げ続けたが根気に負け、奴を連れて帰宅したのは
空が明るみ始めたころだった。

「お前のせいで、終電のがしちまったじゃねーか……」
 ビールを少しづのどに流しながら、顔を睨みつける。
「わざわざ寝床を用意してやったのに、どうしてわざわざ潜り込んで来るんだ?」
 お前が今寝てるところは俺専用だ。相手に聞こえないとわかっているけれど、
言わずにはいられない。
「答えねぇよなぁ、お前寝てるもんなぁ……。でも答えろよ聞いてるんだから」
 返事は無い。とろけるような日が射す部屋に騒々しい寝息だけが響く。
 いたたまれなくなって二つ目の缶を開け、だんだん意識がクリアになっていく中
ベッドのほうをもう一度見た。そしてため息をついた。
 犬に喋るための口はついていない。それだけは確かだ。