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受けを○○ちゃんと呼ぶ攻め×攻めを○○くんと呼ぶ受け

今夜は波音がやけに高く聞こえる。
すぐ横で眠る奴のいびきも大概大きいが、それ以上だ。
こういう夜は何故か昔からよく目が冴える。
ぼんやりとした頭でずり落ちかけの掛け布団を引っ張り上げて、
目を閉じるけれども波音といびきがうるさくてなかなか眠れない。
行き所を失くした視線が、少し下にある奴の寝顔に留まった。見事な間抜け面だ。
ふにゃりと何かを呟き出したが聞き取れない。
いびきに加えて寝言とは、この憎たらしい幼馴染はやはり俺を眠らせたくないらしい。
挙げ句の果てには眉を少し顰めて手を閉じたり開いたりし始めた。
ああもういいや、俺は寝る。寝ると決めたら寝るんだ、どんなに眠れない夜でも。

「…あき、と…ちゃん」

ようやく閉じようかという瞼を無理矢理に開かされた。
それも、ここ17、8年聞いていない呼び名でだ。おかげで頭もはっきりと覚醒した。
暫く奴を見下ろしていたが、俺の名をそう呼んだのはその1回だけだった。
もう1回言おうものなら鼻でもつまんでベッドから蹴り落としてやろうかと思ったが、
後の言葉は日本語になっていなかった。
いや、俺の頭が受け付けていなかったのかもしれない。

「………、…ゆい、くん」

手を握り返してやった。変に掠れた低い声なのに、奴がガキの頃と同じ笑顔を浮かべた。
ああもういいかお前だし、と思ったら急速に眠気にとりつかれた。
かすかないびきと心音が、緩やかに俺を奴のところへ導いていく。
世界をざわつかせていた波音はもう聞こえなかった。