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完全陥落

絶対ありえないって思ってた。自分に自身があった。
だって、あいつは男で、僕だって男だ。
骨ばった節の高い指で頬を撫でられたって、柔らかくもない胸に抱きしめられたって、キモイだけ。
そう思ってたんだ。

なのに、あいつの低く押し殺したような呼気が首筋をくすぐると、背中をゾワリと何かが這い上がる。
くすくすと悪戯な笑いを含んだ声が、湿度を伴って僕の名前を呼べば、
それだけで、ひざからふわりと甘く力が抜けていく。

立ってるだけで、笑う気配だけで、官能に直結するなんてありえない。
女じゃないのに、僕の脳髄を焦がすのは、すべてあいつの男臭い仕草や表情だなんて。

『好きだ』って言われて、『ふざけろ、バカ』って鼻で哂って返したのは、まだたった一月前の事なのに。

まるで初心な女の子のように、あっさりと落とされている。

一月の攻防は、あっけなく僕の完全陥落で終わりを迎えるようだ。

悔しいから、僕の方からあいつの薄い唇にキスしてやった。
密やかな反撃として。