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嘘でもいい

あぁ。なんであんなヤツのこと好きなんだろう。
軽いし、嘘つきだし、時間にルーズだ。
今日だって、あいつから誘ってきたくせにもう30分以上、遅刻してる。
遅れるならメールのひとつ位入れやがれ!
ありえない。本当に。

今日はおれの誕生日で、いつも通りなら家族で外食のはずだった。
でも、この年にもなって誕生日に家族で外食なんてダサいかなって思ったし、
なによりあいつが、この日に遊ばないかって言ってきたから……。
まぁ、あいつがおれの誕生日なんて知るわけないし。それでも、嬉しかったんだけど。
あーあ。
おれはみじめな気持ちでおろしたてのブーツのつま先を見つめた。

「いやぁ。遅れてマジごめん。」
軽く叩かれた肩。振り返ると、悪びれない笑顔のヤツがいた。
「……」
怒りのあまり、おれはリアクションもできない。
「いやぁ、おばあさんがペットボトルの大群に襲われててさぁ。」
こいつのこういうところには殺意すら覚える。
「……嘘つくなら、もうちょっとマシなのにしろよ。」
「うん。そうだね。」
その時、突然首のまわりにあったかい感触がした。で、目の前に突き出された花束。
「このマフラー、おまえに似合うなぁ。って思って。はい花も。誕生日おめでとう。」
そしてひときわ声を潜めて、耳元を掠めるようにヤツは言った。
「好きだよ。」

こいつのすること、言うことのどこまでが本当で、どこからが嘘なんだろう。
あぁ。でも、もう。嘘でもいいや。
こみ上げてくる涙が、悔し涙か、嬉し涙なのか、呆れからくるものなのかもわからずに、おれはそう思った。