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人でなし×お人よし

「僕はね、医学生であって医者じゃないんですからね」
真夜中に呼び出されて、傷の手当てをさせられるのはもう何度目だろう。その度に同じことを繰り返す。
「頼みますから、ちゃんと病院に行ってください…必ずですよ?」
今まででも一番ひどくやられている様を見て、少し厳しい口調で言った。
彼は曖昧に返事をして誤魔化すように笑ったが、すぐ苦痛に顔を歪めることとなった。

どうして、あなたがこんな目にあわなけりゃならないのですかと、聞いたことがある。
こんなことくらいしかできないからだと、彼は答えた。
答えになっちゃいないと言ってやった。
「確かにあいつがやったことは人としてあるまじき行為かもしれない。
 それでも俺は、それが正しいことだと思ってる。あいつは間違ってない」
信じてるんだと続けた彼が何故か少し妬ましく、僕は意地悪を言う。
「法が禁じていることだ」
彼は挑むような目をして不敵に微笑んだ。
「だから俺はこうして、暴力を甘んじて受けてきたんじゃねぇか」
やっぱり答えにならないと思った。

明け方、世間から人でなしと罵倒される男が息急き切って僕らのいる部屋へと駆け込んできて、
目の前に横たわる傷だらけの彼を見るなり「ばかやろう」と叫んだ。
そしてその場に崩れるようにして泣き出した。
顔を大きく歪ませて、しかしそれを隠そうともせず、声をあげて泣くのだった。