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コスモス・時間旅行者

現在ではコンピューター制御されたホログラムの中でしか見ることのできないコスモス。
しかし今、獄中で俺が見つめているのは紛れもなく清楚な一輪のコスモスだ。
まるで昨日手折ったばかりのような鮮やかさでそこにある。

タイムトラベルが特権階級のものだけではなくなった今でも、
平行世界を極力作らないためにトラベルの規制は厳しい。
旅先の人物との交流はもちろん、いかなる事物も損壊持ち帰りは厳禁、
そこに存在した痕跡を最小限に留めなければならず、
違反すればパスポートは剥奪され厳罰に処せられる。

『滞在日数超過罪』
『人物事象に係る痕跡残留罪』
それが俺の罪状だ。まもなく刑期を終え自由の身となる。


文明開化の波が押し寄せ、着物姿の中にちらほら似合わぬ洋装の人々が混じり始めたあの時代に
長く短い1年間、俺とおまえは深く静かに愛し合った。

「綺麗だろ?ほんの数十年前に渡来した花なんだ。」

旅立ちの日、おまえはそう言って傍らのコスモスを手折って俺にくれた。

「またいつか会えるさ、それまで元気でな。」

泣きながら微笑んだおまえはそんな日がやって来るはずのない事を知っていたのだろうか。


バイオテクノロジーの進化により5年間鮮やかに咲きつづけてくれたこの花もやがて枯れるだろう。
それでも、おまえを抱きしめたぬくもりと想い出は褪せることなく俺の中にある。
あの一面のコスモス畑とともに・・・。