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6万人の声援

「凄い景色っすね」
「…そうだね」

このメンバーとバンドを組んでもう何年にもなる
初めての大会場での公演
小さなライブハウスからスタートした俺たちの表現
今はこの大会場にいる6万人もの人が、俺たちのことを見てくれている
応援してくれているんだ

「オレあんま感動とかしないほうだけど…これは…やっぱすごいね」

隣にいる男がギターを抱えながらステージ袖から客席を見つめ、そうつぶやく

「…アンコール、かかってるよ。ほら、着替えないと」
「あ、そっすね」
「ギターも下ろしなよ。つかなんで持ってきてるの」
「なんとなく、手放せなくなって…あ、弦切れてら」

そう言って、彼はギターをスタッフに預け、また俺の隣へ近づいてくる

「あの」
「ん?」
「ちょっと、手、貸して」

そう言って、彼は俺の手を握る
その手はとても暖かかった

「…どうしたの?そんなキャラじゃないでしょ君は」
「ちょっとセンチメンタルな気分なんですよ」

「…最初はあなたのこと、ちょっと怖いなって思ってたんだよね」
「…うん、知ってる」

正直、メンバー間は仲はいいが、俺と彼はあまり会話をしないほうだった

「オレよりずっと背ぇ高いしキレるとマジおっかねえし酒グセも悪すぎ」
「あはは…ごめんね」
「でも、いちばん優しいのもオレが弱ったとき一番きにかけてくれたのもあなただった」
「そうかな」
「そうだよ」

「だから、言うか悩んでたんだけど、」

微笑んで、彼は俺の手を離し、唇に触れる

「怖かったけどずっと憧れてた、んで、ずっと好きだったんだ」

ふたりの唇が重なる
ステージングで火照った体の熱が溶け合うように重ね合わさる


「…返事は、解散したあとにしてね?ン十年も先だろうけど」