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悲しい夜明け

舞うように剣を振るうその姿は、古くから伝説として語り継がれてきた
闘神のようだった。
上段から渾身の力で以って振り下ろされた諸刃の剣を、手にした細身の
剣で受け止める。

ぶつかり合う鉄剣が立てた音が、耳障りなほどに空気を震わせた。
強く絡み合う視線。
力任せに押し付けられる剣を綺麗に弾いて、オレは間合いを取るために、
一歩後ろに飛び退る。

改めて対峙した、その見る者全てを凍りつかせるような怜悧な紫瞳も、
眩いほどに陽を弾く豪奢な金の髪も。
オレを殺すためにそこに在る、その姿の何もかもすべてが、この胸を焦がす。

知らなかった。何も知らずに出逢って互いに惹かれた。
愛していた。───多分今でも愛しているのに、殺し合う。

風に靡く漆黒のマントを煩げに払って、お前は片手で軽々とその大剣を構える。
一分の隙もない身のこなしで両腕を広げたその姿に───オレは一瞬、遠い日の
幻を見た気がした。

約束の場所で、いつだってそうしてオレを待ち構えて、その腕の中に抱き締めて
くれたお前の広げられた両腕が、オレの地平線のすべてだった時があった。

今、その地平線の彼方から太陽が昇る。
藍色に沈んだ空に、希望に満ちた光を撒きながら。

───それは、世界で一番悲しい夜明けだった。