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ひげ

じょりじょり……
「……」
じょりじょりじょり……
「……」
後ろから俺のことを抱きしめる男は、無精ひげの生えたあごをしつこく俺のほほに擦りつけてくる。
耐えかねて俺は、勢い付いて振り返り、噛み付くように男に言った。
「おい!お前いい加減やめろよな!暑苦しい!それに痒いんだよ!」
「ふふ……。そんなこと言われたら傷ついちゃうな、オレ。」
全く傷ついてない調子で男は言う。
「宮野。宮野はオレだけのものだよ。他の誰にもこんなことさせちゃダメだからね。」
こいつ、むかつく。俺がこいつから離れられるわけがない。それをわかっててこんなこと言ってきやがる。
だったら、お前はどうなんだ。
こいつの甘いところ、優しいところ、さらっと恥ずかしいこと言ってのけることろ。
好きだけど。悪い気はしないけど、不安になる。
お前こそ、別のところで、別のヤツに同じようなことやってるんじゃないのか。
他のヤツにも、この胸が疼くような、他の事はどうでもよくなるような感覚を味あわせてるんじゃないのか。
「どうしたの?宮野。ほら、こっち向いて。」
こいつと一緒にいる限り、このどこか寂しいような感覚はなくならない気がする。
でも、それでも。俺はこいつから離れられない。
俺は、自分から男の無精ひげに手をのばした。