※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

一日違いの誕生日

『なんかさぁ、プレゼントとかってめんどくさいからいらなくねぇ? 』

そんな事を言って彼が笑ったのは1ヵ月前の今日。
『どうせ貰った翌日には返すんだからさ』なんて、
笑ってみても自分に遠慮しているのは分かっている。
去年まではやり取りしていたのに、急にいらないなんて言い出したのは、
最近仕事に忙殺されて、帰宅さえままならない自分を気遣っての言葉だった。

日付も変わって、周囲は寝静まった深夜。
手ぶらで彼の待つマンションのドアを開ける。
せっかくの誕生日を1人ですごす羽目になった彼は、
だらけた猫のように、しなやかな体をソファに伸ばして、1人ビールを飲んでいた。

「おぉ、お帰りぃ~」

手にした缶ビールをテーブルに置いて、彼の視線は自分の空の両手を確認する。
自分でいらないと言っておいて、あからさまにがっかりするガキっぽさに思わず笑った。

無言のまま近づくと、こちらの真意を伺うような真っ直ぐな視線に射抜かれる。
彼の飲みかけのビールを手にすれば、それはもうすっかりぬるくなっていて、
自分の帰宅を待つ、彼の寂しさを思わせた。

ぬるいアルコールを一気に干して、ソファに伸びたままの彼の上に覆いかぶさって、キス。
啄ばむ隙間から、安堵のような吐息が漏れて、わずかに目を開いてみれば、
彼もまた、真っ直ぐな視線を向けていた。

「……あんたが帰ってきたから、それでいいや……」

本当はちょっとは期待していたらしい。
明日……いや、もう今日だ。
自分の誕生日は、彼へのプレゼント選びの日になりそうだ……それもまた悪くない。