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わんこ×ぬこ

僕はタマのお母さんに育てられた。
ずっとタマとは兄弟だと思ってた。でも僕はタマやお母さんみたいにニャーなんて
かわいい声で鳴けない。爪もひっこまない。
どんどん大きくなる僕に、タマは最近冷たい。
「やっぱり子どもの頃からいっしょだと犬と猫でも仲がいいね」
なんて飼い主たちは言うけど、僕は犬なんかじゃない方がよかった。
ちゃんとお母さんから生まれたかった。タマといっしょに塀の上を歩いたり、
狭い道を抜けたりしたかった。
お母さんに相談して、猫会議にもついていったりしたけど、他の猫は僕を
認めてはくれなかった。なんだかんだで家の兄弟や親戚たちは僕を家族
として扱ってくれていたから、ショックだった。僕はやっぱり猫じゃないんだ。
大人になった僕は、首輪と鎖をつけないと外に出してもらえない。
タマは他の兄弟たちと外に遊びに行く。兄弟たちから外の話を聞くのは好きだ。
だけどタマは僕が外はどうだった? って聞くと、嫌そうな顔をしてそっぽを
向いてしまう。姉さんが、タマはモテてるよって笑いながら教えてくれた。
メス猫たちがいつも集まってて、最初はオス猫からいじわるされてたけど、
近頃はオス猫の友達もできたみたいだって。兄弟たちの口からしょっちゅう出る
タマの友達の名前に、僕はどうしようもなくやきもちを焼く。
僕がちゃんと猫だったら、タマのそばから離れたりしなかった。
タマに僕が知らない友達ができるなんて。

ある日、兄弟たちが出て行った庭の抜け道をぼんやり見ていると、見たことの
ないきれいなキジ猫が入ってきた。僕が誰だろうって見てると、その猫はニヤ
っと笑った。
「本当に、猫を見ても吠えないんだな。おまえだろ、ポチって」
僕は思わず立ち上がった。急に立った僕を見て三毛猫は少し驚いたようだけど、
自分はタマの友達だと名乗った。ああ、じゃあ、この子がマルだ。タマの一番の
友達だって兄さんたちが言ってた。
「うん……僕がタマの弟のポチだよ」
なんだかもやもやした気持ちになりながら僕はいつものように名乗った。
マルはそれを聞いて笑った。
「なんで犬が弟なんだよ。タマはいっしょに住んでる犬って言ってたぞ」
僕は頭が真っ白になった。やっぱり、タマは犬が兄弟だなんて嫌だったんだ。
そのとき、抜け道からがやがやと何匹もの猫が、タマにつれられて入ってきた。
「マル、なんで先に行くんだよ」「うわ、ほんとに犬だ」「おー、吠えないぞ」
口々に好きなことを言う猫たちに、タマがきっぱり言った。
「お前ら、見世物じゃねーぞ、ポチは犬でも俺の仲間なんだからな!」
マルは仲間たちの輪に入ると、タマをなだめるようにシッポをゆらした。
知らない猫に囲まれて、なによりタマのことばがうれしくて、呆然としていた僕に
タマが近寄って照れたような顔で――不器用なタマだけど、僕にはわかる――
言った。
「お前があんまりうらやましそうに外の話聞くからさ。いっしょに育ったのに、俺
たちだけ外に行けるのがなんか……なんかイヤでさっ。だから、他の連中に
お前のこと話したんだ。お前は犬だけど、猫じゃないけど、いい奴だって。
それで、今日、連れてきたんだ。騒がしいけど、悪い奴らじゃないから……」
僕は、僕はタマに飛びついた。焦って僕の下でタマがめちゃくちゃに暴れる。
「重っ、つぶれる、つぶれるだろ! お前はうっとうしいんだよ、暑苦しい!」
ちゃんとタマが話しておいてくれたんだ。その様子を、猫たちは笑って見ていた。
何匹かが、僕たちの方に近寄ってくる。それを見て、タマは小さい声で言った。
「お前さ、友達できても、ちゃんと俺に話せよ、お前は犬だけど…弟じゃないけど、
弟みたいなもんなんだからな。俺は兄貴分なんだから、なんでも話せよ」
それはこっちの台詞だったんだけど……。
「うん」
僕はそっとタマの背中に鼻をおしつけた。タマは僕の兄弟じゃなくて、だけど
僕の大切な……。