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今日で五年目

紅茶を片手に窓辺に目をやり、軽く溜め息をついた。
窓際に飾られた写真立てには、おれとあいつと、二人で写っている写真が飾られている。

ちょうど今日は、あいつがおれの傍からいなくなってから五年目の日だった。
写真の中のあいつを見るたびに、おれは自責の念にとらわれる。
行かせなければよかった、と。

『大丈夫、すぐに帰ってくるから』

何が「すぐに帰ってくる」だ。
勝手に、おれの手の届かない所へ行きやがって。

車に撥ねられそうになった猫を助けようとして自分が撥ねられた、なんて、あいつらしい。

あの時、おれは初めてあいつのすっとぼけた性格を憎んだ。
「馬鹿」
写真に向かって罵ってみても、何にもならない事くらい知っているつもりだった。
「馬鹿」
行き場のない悲しみを言葉にしてみて、何度も写真の中の、おれの記憶の中のあいつを罵倒してみる。

『馬鹿って言った方が馬鹿だって、知らないのか!』

おれの記憶の中のあいつは、ガキの理論を持ち出しておれに反論してくる。

あながち、間違いでもないな。
確かに、おれは馬鹿だ。
五年たった今でも、おれはおれの記憶の中のあいつの死に捕らわれ続けているのだから。

紅茶には、レモンを入れるつもりだった。
だが、ふと思い留まり、ミルクを入れることにした。

『紅茶にミルクを入れるなんて、邪道だろう。紅茶はレモンに限る』
『いーや、レモンよりもミルクを入れたほうが美味しい!』

あの時は、本当に他愛の無い事で口喧嘩をしていたと思う。