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山手線

金もない学生だった頃
似た者同士の俺達は、良く山手線に乗った
お互い狭い実家から学校通いで、今時珍しい四人兄弟
俺は兄貴と妹二人
あいつは姉貴と弟と年の離れた妹
家は寝食に帰るだけの場所だった。
『どっか行きたいけど金ねぇな』
バイトの休みがかち合うと、どちらからともなく言い出して、決まって俺達は山手線に乗った
取り立ててあれこれ喋る訳でもなく
ひたすら、ただ隣りに並んで有効時間いっぱい環状線の電車に揺られていた
俺が眠っていたり、あいつは本を読んでいたり
時には逆だったり、駅名を暗記してみたり、ぼんやりしていたり
今考えてみると、何て時間の使い方をしていたんだろうな

ある日
卒業を間近にした俺達は
最後だからと耐久山手線乗車チャレンジなんてした
わざわざ始発駅まで行って、始発からスタートして
約四年間の事を思い出して、初めてそれまでになく他愛もない話を沢山した
けれど終電で降りたら、地味に体中は悲鳴を上げて
駅案内のアナウンスなんか二度と聞きたくないな、と勝手な文句を言って
俺達バカだな、と顔を見合わせて笑ったっけ

あれから数年、Tシャツとジーンズとスニーカーはスーツと革靴に変わって
一人暮らしを始めて住まいも沿線も変わった俺は、山手線に乗ることもなくなった

けれどたまに思い出す
それじゃ卒業式で、と
笑顔で手を振って別れたあいつの姿を

最後に山手線に乗った時
あいつは隣りにいなかった