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パチ屋の主任×店長

その日、間違いなく、俺は疲れていた。
この前、家で寝たのは、いつだっけ。というか、家に帰ったのは、いつだっけ。
もうそろそろ、ロッカーに置いてあるシャツも、洗濯済のヤツが無くなるはずだ。
今日こそ帰らなきゃ。洗濯しなきゃ。
…って思ってたはずなのに、今日も深夜4時。
今更家に帰っても、明日の朝10時の開店に間に合うように、店に来る自信がなくて、
俺は店の上にある休憩室へ、ふらふらと入っていった。
体が鉛のように重いのは、ここ3日ほど、まともに寝ていないからだ。
真っ暗な休憩室の真ん中には、ソファが置いてあって、仮眠がとれるようになっている。
こんな部屋があること自体、パチンコ店が異常な労働を強いられる、ということを
表している気がするんだが…、と思いながら、俺はネクタイをゆるめた。
シャツはシワになるが、もうしょうがない。
俺は、電気もつけずに、ソファに倒れこんだ。硬い何かが、アゴに激突した。
「ギャァ」という声も響いた。しまった、先客がいたか。
アゴの痛みに思わずうめくが、体を起こす元気が無く、俺はそのまま強引に
ソファに身を横たえた。
どうせ、こんな時間にここで眠るのは、副主任か社員ぐらいだ。言い訳や謝罪は、
明日したらいい。今はとりあえず、この疲れを何とかしなければ。
先客は、しばらく俺を蹴落とそうとモゾモゾしていたが、俺が動かないと分かったのか、
諦めて大人しくなった。
「…稲谷主任…か?」
先客が何か呟いた気がしたが、睡魔に飲み込まれてよく覚えていない。
そういえば、隣に人の体温を感じながら眠るのも、しばらくぶりだった。

目が覚めたら、店長がいた。至近距離で、俺の顔をのぞきこんでいた。
「…?」
「よく眠れたか?」
低い声で店長がささやく。俺は何がなんだか分からず、混乱した頭で、とりあえず
はずれていたメガネをかけなおした。
「起きたなら、腕、はずせや」
「は?」
「腕」
下を見ると、俺は店長を抱きかかえていた。腰のあたりに手をまわして、ガッチリと
抱きしめている。男同士で、下半身が密着するかしないかの距離で、接近して…。
「うわ、すいません!」
状況を把握して、俺は思わず腕を離して、飛び起きた。
店長も、ばつの悪い顔をしながら、起き上がる。
「…昨日は、夜中に俺の頭に頭突きするわ、狭いソファにもぐりこんでくるわ、
 抱きしめるわ、触るわ、やりたい放題だったな」
「す、すいません…熟睡して、よく覚えてなくて」
「ま、疲れてるって分かってるけど…。今日店に出てくる時は、そのヨレヨレのシャツで
 出てくんなよ」
店長は、立ち上がると部屋を出て行こうとした。
しかし、出て行き様に振り返った。
「…お前、首筋、虫に噛まれてるから、バンソウコウか何か貼っておけよ」
「あ、はい…」
反射的に首筋をおさえながら、俺は混乱した頭をもう一度深く下げた。
虫? 特にかゆくも何もないけれど…。
俺は、重い頭をふって、早く仕事モードに頭を切り替えるよう、努力した。

この夜、俺が店長にやったこと、そして店長が俺にやったことを知るのは、もう少し後になる。