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大人の純粋

「俺あん頃は部活の事しか頭になかったわ」
「俺も。毎日お前と帰ってたけど部活以外の会話した記憶ないな」
「いっこあるじゃん部活以外の会話」
「あー…林さん?」
「そうそ、委員長。お前はもっと守ってあげたい系の子が好みだと思ってたからさ、
俺も林さんが好きなんだーって言ってきたときすげーびっくりした」
「俺もびっくりした。そういや今日林さん見たか?振袖すげー似合ってたぞ」
「見た見た、初恋だったんですーって記念写真撮ってもらったよ俺」
「何お前もしかしてまだ…」
「違うって。記念だよ記念。今日ぐらいしかこんな機会ないし。
でも今考えるとさ、あん時はすれ違うだけでドキドキしてたよな」
「一日何回顔見れたか数えたりな」
「やったやった!恐ろしく純粋だったなー」
「今じゃさすがにできないな、そんな甘酸っぱい恋愛」
「だな。打算とか駆け引きとかさ、ドキドキするような純粋な恋愛なんてないなー」
「大人になったからな、俺らも」
「汚い大人になっちゃったよなー」

「……って話したよね、成人式の日」
「覚えてないよそんな昔の事」
「昔って。10年前だよ」
「十分昔だ。と言うかなんで10年振りの同窓会なのに俺の所に居るんだ。友達の所、話しに行かなくていいのか?」
「同窓会で昔の親友と話すのは普通だろ?」
「同窓会も何もお前成人式の日に俺に連絡先聞いて以来ほぼ毎日顔合わせてるだろ」
「だってせっかく近くに住んでるんだし。近所付き合いを大事にするんだよ俺。」
「ほぉ、人の仕事中に勝手に家に上がりこんでくつろぐのが近所付き合い?」
「家事とかやってあげてるんだし、お前も助かってるだろ?」
「それはそうだが…いいから仲良かった奴の所行って来い。今日しか会えない奴も沢山いるだろ」
「分かったよ。…なぁ、お前、まだ思ってる?」
「何をだ?」
「純粋な恋愛できない汚い大人になっちゃったなー、って」
「あぁ、大人と言うよりはもうおっさんだけどな」
「俺は今は思ってない。あれからいろんな事が変わっていってさ、馬鹿なりに沢山悩んだりして。
お前と話す内容も気付いたら大学や夢の話から仕事とか社会の話になって。
俺、この10年でまた大人になったと思う。何て言うんだろうな……打算も駆け引きも必要ないぐらい、大人になったと思う。」

俺、今人生で一番純粋な恋愛してるよ
そう言って笑った彼の少年よりも澄んだ瞳はまっすぐに俺の大人を見つめていた。