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レイヴ

この時期の子供はむずかしい。

「わあ、シュンくん上手に描けたねぇ。かっこいいロボットだ」
シュンくんはバラ組で一番絵がうまい。
僕の声に気付いた他の子供たちが、シュンくんのまわりに集まって口々に褒めそやした。
「すごーい」
「かっこいー」
「うまーい」
だが、声が重なるにつれてシュンくんの機嫌は降下していく。もともと山なりの彼の唇が、ますますへの字に曲がる。
ついにシュンくんは、黒のクレヨンでせっかく描いた絵を塗りつぶしてしまった。
「ああぁっ、シュンくん、なんてことを……」
「うええぇぇん」
唐突に泣き出したのは僕でも彼でもなく、同じ組のアキオくんだった。
「アキオくん?!」
「ぼく、しゅんちゃんのえ、すきだったのにぃ」なだめてもすかしても、アキオくんはぐすぐすと泣きやまない。
と、シュンくんはじっとアキオくんの顔を見ていたかと思うと、突然画用紙を裏返し、猛然と何かを描き始めた。
泣くのもあやすのも忘れ、僕とアキオくんがぽかんと見守ること十分。
驚異的なスピードで描かれたそれは、満面の笑みを浮かべるアキオくんの顔だった。
「すごい、そっくり…」
シュンくんは仕上げに小さくサインのようなマークを書くと、描いた絵をアキオくんに差し出した。
アキオくんはぱちぱちと瞬きし、絵を見つめ、再びシュンくんを見て、ふんわりと笑った。
「ありがとう。しゅんちゃん、だいすき」
シュンくんの頬がわずかに赤くなる。いっちょまえに照れてるんだなぁ、と思うと、こちらまで微笑ましく感じた。

本当に、この時期の子供はむずかしい。
なにしろ、周囲の称賛よりも、たった一人の笑顔を選ぶくらいなのだから。