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天然で腹黒な年下×人気者だけどへたれな年上

「先輩、また振られたんすか」
携帯電話の待ち受け画面に映る女性の笑顔を悲しげに見つめる、新堂の姿が目に入った。
坂本は速めた足でその横に近づいて、彼の脇に腰掛ける。
突然後輩に声を掛けられた新堂は、普段どおりの人のよさそうな顔をほんの少し苦々しげに顰めて、言葉を返す。
「うん。なんか、な、『貴方は、私より仕事のつきあいが大事なんでしょ』って」
「はぁ」
適当にやる気のない相槌を打つと、新堂は浅く溜息を吐いて頭に手をやった。
耳に掛かった髪をくりくりと弄びながら、何か嫌な事でも思い出すかのように目を細くする。
「つーか、さ、疑問なんだけど」
「はい?」
先を促すように小首を傾げれば、彼は至極不思議そうに尋ねた。
「仕事が大切なのは当然だろ。仕事しなきゃ、デート代どころか生活費だって出せないわけだし。
『私と仕事とどっちが大切なの』なんて聞かれたって、答えようがないだろう」
……エリートの割りに、こういうことに関しては駄目な人だなぁ。
どうにも恋愛慣れしてないって言うか、良くも悪くも仕事バカで生真面目って言うか。
まあ、そこが、職場の同僚や後輩達に好かれてる一因なんだろうけど。
坂本は心中でそう思いながら、まだ悩んだ顔のままの新堂に顔を近づけた。
「先輩。多分先輩って、恋愛に向いてない体質なんですよ」
「そんな事はないぞ」
「その自信はどっから来るんですか」
呆れたようにそう言えば、新堂はふんと鼻を鳴らして坂本に向き直った。
「とにかく、今日は自棄酒だから。お前も付き合えよな」
「また? 一昨日飲みに行ったばっかりじゃないですか」
「当たり前だろ。少しは、失恋した上司を慰めるとか労わるとかいった気持ちを持て。
……大体な、振られたのだって、お前が飲みたいって駄々捏ねる度に、何度もあいつとの約束キャンセルしたのが原因なんだぞ。
つまり、俺とルミが別れたのは全面的にお前が悪いわけだ」
「はぁ……」
愚痴を言い続ける新堂にわざとらしく聞こえるよう大きく吐息して、坂本は眼前の彼を見上げた。
本当、馬鹿だなぁ……。
毎日毎日職場の後輩を飲みに連れて行って、そのせいで自分との予定を断るような男がいたら、そりゃ彼女だって言いたくなるよ。
『私と仕事と、どっちが大事なの?』って。
……それにしても、と坂本は未だこちらを見ながら何事か言っている新堂を見つめた。
俺、そんなにしょっちゅう先輩のこと誘ってたかなぁ?
自分じゃ、そうそう記憶も自覚もないんだけど。どうせ、振られた逆恨みでしょうに。
まったく、言いがかりもほどほどにして欲しいよなぁ……。