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雨に濡れて

「うわ,もうビショビショ,最悪」
 ようやく,歩道橋の階段下の狭いスペースを見つけて滑り込んで,あいつが自転車を止めた。
 ほとんど前も見ずに豪雨の中を走りに走ってきたので,俺もあいつも呼吸が荒い。
 自転車通学を余儀なくさせられている田舎の高校生である俺達にとって,
帰宅時間の突然の雨は,まあ,たまにあるハプニングだ。
 女子は雨が止むのを待ったりしてるが,たいてい男は突っ切って走って帰る。
 俺達もいつものように走り出して……常より激しい降りに降参して,こうして雨宿りとなった。
 確かに最悪だ。
 雨に濡れて,奴の制服のシャツが,その下の肌色を浮かび上がらせてしまっている。
 自転車は濡れるに任せるとしても,こう狭いスペースじゃ距離が近すぎて,
目をそらしたところで伝わってくる体温は遮断できない。
 いつまでも,いつものように,一緒に帰れる友達でありたい。
 そんな俺の切実な思いを,いつもと違うシチュエーションが壊してしまいそうだ。
「パンツまでビッショリ」
 屈託無く笑うあいつがヤバイ。
 濡れた体から立ちのぼるあいつの匂いがヤバイ。
 俺の最後の理性がヤバイ。
 腕を伸ばさずとも容易に掴めてしまった濡れた肩を,とうとう俺は引き寄せてしまった。

 雨に濡れた唇は,それでも暖かかった。