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永遠に置き去り

『拝啓、お元気ですか。僕の方はぼちぼちやっています。
 そっちはどうですか?変わりなくやっているでしょうか。
 …堅苦しい文はやっぱり苦手です。
 会いたい。会いたい。今どこにいますか。何をしてますか。
 僕は相変らず、君を
そこで僕は我に返って、便箋からペンを放した。これ以上、言葉になんて
出来ない。言葉にしたって、仕方ない。

あいつは僕を置いて、遠いところへと行ってしまった。
…それは少し語弊がある。僕たちは、別々の道を行くことにした。
今でも僕はかれのことを愛しく思っているし、かれも僕を嫌いになんてなっていない。
だけど、かれの目指す未来は、僕の横にはいてくれなかった。
「行きなよ。今しかないんだから」
笑ってそう言ってやれて、ほんとによかった。泣きながら送り出すなんていやだった。

分かってた。
ぼろぼろの男二人暮らしの部屋の中でひとつだけ、ぴかぴかに磨かれたギターを
大事そうに抱える姿を、僕はずっと見てきたから。
君はいつか僕の手の届かないところに行ってしまうんだって。
なんでもない振りをして、送り出してやるのが一番いいことだって。

書きかけの手紙をあて先のない封筒に入れる。胸がぎゅっと鳴った。
『僕は相変らず、君を愛しています。』
そんな言葉を伝える必要は、もうどこにもないのだ。

――こんな風に誰かを好きになることは、もうきっとない。

だけど、もう振り返らないと決めた。後悔も未練も永遠に置き去りにして、
僕は君の夢が叶う日を夢見ながら、生きていこうと思う。