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最後のメール

いつもどおり、今日も日が暮れる。おれはそれを、ぼろアパートの二階からぼんやり眺めている。
こんな暇な時間を過ごせるほど経済的余裕はないけれど、でも、この時間は仕方ない。

だってあいつが来るから。
頼んでもいないのに、いつもいつもコンビニ袋に二人分の食料を詰め込んで。
へらへら笑って、ドアからひょっこり現れるのだ。
やかましいし、うっとうしいし、酒癖も悪いし、ちょっとうざいやつ。
だけどあの顔を見るたび、一日の鬱々とした気持ちが嘘みたいに晴れていく。
そしてそれが、とても、とても嬉しい。……若干餌付けされてる気もしないでもないけど。
かれが会いに来てくれることが、おれの一日の中で一番の楽しみだった。

ところが、その男が来るのが、今日はどうも遅い。
来ないなら来ないでいつもはうっとうしいくらいがっかりメールをくれるはずだけど、
それを忘れてるんだろうか。

連絡でもつけてみようかと、携帯電話を開いた。

『今日の夕飯どーする?』
実に一時間も前の着信だった。一時間も気づかなかったとは、さすが。自慢にならない。
『たまには作ってやるから早く来い。待ってるよ』
送信ボタンを押して、携帯をすぐ閉じる。

どうせ会社でポカやらかして、残業でもしてるんだろう。あいつはあほっぽく見えて、本当に
あほだから。大学生のころから、ちっとも変わりやしない。
だからきっと、今も携帯電話を見てないんだろう。さっきのおれみたいに。
せっかく料理してやるって言ってるんだから、早く来ればいいのに。
こんなに待ってるんだから、早く来ればいいのに。

早く、早く来ればいいのに。