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合併

会議では相手側の一方的な意見しか通らずに
結局俺が在籍している霧咲高校は、桃山高校に吸収合併される事になった。
桃山高校は名前も制服も変わらない。80年の伝統は、これからも残される。
霧咲高校は、俺たちが卒業したらなくなってしまうのに。
教員たちが生徒全員の家を回って謝罪していたが、
正直俺は何も聞きたくなかった。教員たちだって辛いはずだ。
それに、どんなに謝られたって霧咲高校の吸収がなくなる訳じゃない。
憧れて、自分なりに頑張って入った高校なのに。
何だか心に穴が空いたみたいだった。

学校の帰りに駅を降りると、中学の時の友達で桃山に入った川島に久し振りに会った。
「うちの高校、お前んとこと合併するよな」
「吸収だけどな」
当然の如く出てきた話題に、俺は少し複雑な思いで相槌を打つ。
こんな嫌味みたいな事、川島に言っても仕方ないのに。
「・・・何か、悪いよな」
川島が少し目を伏せた。しかし、すぐに気を取り直したように顔を上げる。
「でも、合併されるって事は俺たち同級生になれるんじゃないか?」
「・・・お前偏差値はめちゃくちゃ高いくせに、頭悪いんだな。
合併したって俺たちが桃山の生徒と一緒に勉強できる訳ねぇだろうが」
「そうなのか?」
「今まで通りだよ。俺たちが卒業したら霧咲がなくなるってだけで」
「・・・・・・」
気まずい空気が流れる。
口を開いたら嫌味と愚痴ばかりになってしまって、嫌だ。
「じゃあ、これからバイトあるから」
俺は堪えられずにその場から逃げ出そうとした。
「あ、ちょっと」
川島に呼び止められて足を止める。
「ん?」
「学校違っても、たまには会おうな」
「・・・・・」
「遊びに誘ってくれよ」
「・・・おう」
「じゃあ」

ひょいと手を上げて、別れる。
川島との会話で、寂しい気持ちが少し薄れたような気がした。