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⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブーン

『空が飛びたい』
それがあいつの口癖だった。
両手を大きく広げて、そのままの格好で『ブーン』なんて言いながら河原を駆け回る。
そんなあいつを横で見ながら、草笛なんかを吹いてぼーっとしている時間。
それは何より楽しくて、のんびりと流れる優しい時間だった。
「俺が飛ぶところを、健ちゃん絶対見ててくれよ」
そう言いながら土手を物凄い速度で下っていって、そのまま止まりきれず、
川にぼちゃんと落ちて底の石で足を怪我したりする、あいつは酷く馬鹿な奴だった。

それでも俺はあいつが好きだったし、あいつの夢も、好きだった。
応援したいと、思っていた。
次第にこの国は傾いて、暢気な夢など語れない時代になったけれど、
あいつは、自分の望みを諦めたりしなかった。

だけど、だけどだからといって。
あんな小さな飛行機に乗って、何とか片道持つだけの僅かな燃料のみを積んで、
真剣なキラキラした瞳の笑顔で、飛んでいかなくてもいいではないか。
「絶対見てて」と、そう言われても、俺の目から流れる雫が、視界をぼやけさせるのだ。

あいつの乗った飛行機が、抜けるような青空を飛び立って雲の陰に消えそうになる。
『ブーン』と呟いて両手を広げ、真っ直ぐな道を走った。
飛行機が見え続けるまで、走って走って、追い掛け続けた。
息が切れ、足が縺れて転んでも、その心臓が動き続ける限り。飛行機が、見える限りはずっと。