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何度繰り返しても。

「いかないでくれ…っ」

言っては無駄とわかっていても、言わずにはいられなかった。
ベッドに力無く横たわる手を、俺は必死に握る。

「…泣かないで…本当に、すまない…」

そう言いながら、どんなに痩せこけても変わらない眩しさで、お前は笑う。
お前はいつも、俺が行き詰まっていると、目を細めて微笑んでくれた。そして、優しく優しく抱きしめてくれた。

しかし今はその腕も、女のようにか細くなって。
だけど懸命に、抱き締められない代わりとでも言うように、俺の手を握り返してくれる。

「お前はっ…こんなときまでどうして微笑っていられるんだっ…」

目前に、死という恐怖が迫っているのに。

言葉が嗚咽で邪魔されて続かない。
涙なんかながしても、何も変わらない、何もしてやれないんだ。

うずくまったまま握り続けていた指が、そっと俺の手を撫でた。

「俺はね、お前との出逢いは、初めてじゃなかったと思ってるんだ」

「何言ってんだよ…意味わかんねぇよ…」

「ずぅっと昔にも、その前にも、俺たちはきっと出逢って、恋に落ちて、一緒にいたんだ。」

もう殆ど動かせない筈の腕を震わせて、両手で俺の手を握りしめながら、言葉を紡ぐ。変わらない微笑みで。

「こういう別れを何度繰り返しても、俺たちは、また出逢うんだ。だから俺は辛くないよ。何時までも、一緒にいられる。少しの間、独りにしてしまうけど、心配しないで…」

俺はそんな何も根拠のない話に、ただ何度も頷いた。
きっと本当なのだと、自分に言い聞かせるように。

「今回は俺が先に逝くから、次は俺の方が年上かもなー…」

ふふっと微かに声を上げて笑うと、そっと目を瞑り、俺の手を優しく包んでいた両手が、静かに真っ白なシーツに落ちていった。



西日が差し込んで、青白かったお前の顔が紅く染まり、綺麗だ、と思いながら。

吐息が無くなった唇に、キスをした。