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最後のキスと押し倒しにうほっwwとなりつつ踏まれます

 寝転がってテレビを見ていると、先輩は必ず俺のことを踏み付ける。
 先輩はいつもの無表情で淡々と「お前の前世が玄関マットなのが悪い」なんてわけのわからない理屈を言って煙に撒こうとするが、わざわざ進路を曲げてまで人のことを踏みつけていくその行動は、自分に注意を向けたくてわざわざ人を踏んでいく俺の実家のネコの行動とそっくりだったりする。
 ……なんて言うと切れ長の目を細めて「それで?」なんて冷たく言われて、以後最低三日はご機嫌ナナメ・下手をすれば料理ボイコットにより毎食うまい棒(たこやき味)が出されかねないことは目に見えているので、とりあえず今日も黙っておとなしく踏まれている俺なのだった。
「お前が見てる話って、いつもワンパターンだな」
 踏まれることにスルーを徹底する俺の反応がお気に召さなかったのか、先輩は俺の腰に乗せた片足に全体重をかけながら声をかけてきた。
「えー、全然違うじゃないっすかー!どこ見てそういうコト言うかなー」
 踏まれた足の下で手足をじたばたさせて抗議をアピールしてみるが、先輩は俺の方を見ようともせず、つまらなそうにテレビを眺めている。
「どうせこのあとキスして押し倒して一発ヤってはいサヨナラ、だろ。別れるつもりのくせに未練がましい」
「うーわー、俺の燃えかつ萌えシチュ・ラストキスをさらりと全否定しましたね?!」
「あぁそういやお前、切な萌えとやらについて無駄に熱弁を奮ってた事があったな。途中からアイスの賞味期限について考えてたんで聞いてなかったが」
「アイス>俺、ってコトですか!?」
「不満そうだな」
 腕を組んで軽く首を傾げた見下し目線が俺を捕らえる。無論、右足は俺を踏み付けたまま。あぁもう本当そういう尊大な態度と表情似合いますね。Mのケはないけど目覚めてしまいそうです。
 ……なんてぐだぐだしているうちに、テレビに映るシーンは別れを告げられ泣きじゃくるヒロインを抱きしめる主人公。最後に一度だけ、と交わすキスは徐々に熱を帯び、やがてゆっくりとベッドへと倒れ込む。漂う切ない雰囲気や悲壮感、胸を締め付ける感覚がたまらない……エロが目的で見ているわけではないのだ。断じて。

 浸っていると、いきなりぎゅっ、と俺を踏み付ける圧力が強まった。ぐへ、と間の抜けた悲鳴が勝手に口から飛び出る。
「ちょ、一番いい時になにすんですか!」
「なんかムカついた」
 俺を踏み越えて台所へ向かいながら先輩は淡々と告げる。
「俺なら離さない。最後だっていうなら最期にしてやる」
「さらりと恐い発言しないで下さい!唇に毒でも塗るつもりですか?」
「いや、腹上死狙い」
「なっ……」
 絶句する俺になんてお構いなし。持ってきた牛乳をパックから直に飲んで唇をぺろりと舐める。赤い舌が妙になまめかしい。
「自分から跨がって腰振って、からっからに干からびてミイラになるまで俺の中に搾りとってやるつもり……どうした、いきなり丸くなって」
「いや、なんでもない、です……」
 うっかり乱れる先輩を想像して体育座りになる。ただでさえベッドでの可愛さは普段とのギャップと相俟ってえらいことになっているのに、そこに積極性が加わったら正直洒落にならない。
 更に丸くなる俺なんて眼中にないように、やっぱり先輩は淡々と続ける。
「問題は下になっているのに【腹上】と呼んでいいかどうかだな。どう思う?」
「……どうでもいいです!」
「どうでもよくないだろう。お前の死因だぞ?」
「え」
 どういう意味かを問おうとした口は、素早く先輩の口で塞がれてしまった。

×××

『シチュが好きなだけであって、先輩と別れようなんて気は1ミクロンもありません!』

先輩の艶やかな痴態にうっかり酔ってしまい、ようやくそう告げることが出来たのは、死なないまでも散々搾られて身動きできないほどへろへろにされた後の話。