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子育て

「一体どういうつもりだ?」
怖い顔で問い詰められて、俺はその場に固まった。
辺りには洗濯物やらおもちゃやらが散乱していて、足の踏み場もない。
彼はいらいらしながら床に転がっているものを拾って机の上に乗せた。
「まったく……ちょっと家を留守にしたらこの様だ」
泣き声を上げる赤ん坊の怜奈をベッドから取り上げ、腕の中で優しくあやす。
自分がやった事の尻拭いをされてるみたいで、俺は顔を上げられなかった。
「拓也」
呼びかけられて、顔を上げると彼はまだ厳しい顔をしていた。
「何があったのか、説明してもらおうか」
この惨状を見たら、彼がそう問うのは至極当然だろう。
「俺はこれでも一生懸命やったさ!でも子供たちは誰も俺の言う事なんか聞いてくれやしないんだ」
俺は落ち着かずに部屋の中を歩きまわりながら弁解した。
「瑞樹と彩は2人して部屋中を散らかすわ、怜奈は泣き出すわ……俺が叱っても宥めても、奴らはまるで無視だ!」
彼は黙って俺の訴えを聞いている。どんなに言い訳をしても、気まずさは全く消えなかった。
「兄貴、俺には子育ては無理だ」
勢いで、支離滅裂な事を平気で言ってしまう。
自分が何も出来ない人間だって事を証明するだけなのに。
「よく分かった」
彼は頷いて、冷たく言った。
「お前にはがっかりしたよ。そこまで無責任だとはな」
赤ん坊を抱えたまま俺に背を向けて、部屋を出て行こうする。
「待てよ。……どうするんだよ」
「他のベビーシッターを頼む事にするよ」
彼は振り向きもせずにそう答えた。

一人残されて、俺はどうする事も出来ずに突っ立っていた。
謝ったら許してもらえるだろうか。彼にも、子供たちにも。
また俺はこうして甘えてしまうんだな。
そんな自分が情けなくて、俺は自嘲気味に笑った。

兄貴。俺だって、姪っ子は可愛いし、子育てが嫌だなんて思ってない。
でも、ベビーシッター役を買って出た本当の理由は、兄貴と一緒に住みたかったからなんだぜ。
こんな事を言ったら、もっと怒られるだろうけど。