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子育て

――俺はお前の親じゃない。何度言ったら分かるんだ。
 そう言って睨んでも、いっこうに堪えたようでもなくへらへら笑って俺に懐いてくる。
――お前は犬か? アヒルの仔か? いい歳して俺の尻ばっか追いまわすんじゃねえ。
 うっとうしいんだよ、とはねのけてもはねのけても、痛くも痒くもない様子だ。
 以前、お前が女に言い寄られているのを立ち聞きしてしまったことがある。
 孤立してるからってあんたが世話焼く義務ないよ、もう放っておけば? そう迫った女をお前は笑って一蹴した。ごめんね、俺があの人から離れられないんだ、惚れてるから。
――頭おかしいんじゃねえの、俺も男だしお前も男だし、惚れるとかありえねえ。
 じゃあどうしてこんなことするのを許すの、と俺の上で息を弾ませながらお前が訊く。頬を汗が伝って、ほんの一瞬、泣いているように見えた。俺は黙ってお前の口を塞ぐ。
 絶対に言わない。喜ばせてなんかやらない。
 海より空より親より寛大に俺のすべてを受けとめてくれるお前を手放せないのは、本当は俺のほう。