性格悪い人×根性曲がった人

「やっぱ連れて歩くんだったら女の方がいいなあ。
 男二人ってなんか華ねーじゃん?」
俺はそいつの真っ黒の瞳を見て一息ついてそういった。
なんのことはないように、ああ、そう、と呟いて時計をちらりと見た。
全く、こいつの考えていることは分からない。
さっきの嫌味も効いてるんだか効いてないんだか効いてないふりをしてるんだか。
ああはいったが俺はこいつよりも美しい女も人間もはたまた物も今までに見たことはない。
「早くしないと映画が始まるよ。」
振り返る人がこいつを見てため息をつく。
鞄からペットボトルの水を取り出して一口飲んだあと聞いた。
「お前なんの映画みるかわかってんの?」
「そんなことは知らなくていいだろう。
 アンタの見たいもので構いやしないんだから。」
死にネタの感動もの、美談、ホラー、どんな映画でもまゆ一つ動かしやしない
俺がどんなに浮気しようがこいつが男であるということで嫌味を言おうが
その表情は頑なで決して表にだしてはこない。
「コメディだよ。」
「へぇ。アンタそんなの見たかったんだ。」
少し馬鹿にしたような言い方だった。
ああ、俺の気持ちなんて知らずにいい気なもんだ。
俺が本当にみたいのはな、
「お前が笑うかと思ったんだ。」
そういうとこいつきょとんとした顔をしたあとその口角はあがった。



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最終更新:2011年04月17日 11:27