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開かない扉の向こうとこっち

「そこに誰かいないのか?」
閉ざされた扉の内側で、幾度も幾度も扉を叩く。
もうどれくらいこうしているのだろう。声は枯れ、握り締めた拳は腫れて紅くなっても、呼び掛けずにはいられない。
喩えようもない孤独。
この扉の内側は狭くて明かりも射さず、聞こえるのは虚しく壁に跳ね返る自分の声ばかりだ。
誰からも返事は返らない。
「そこに誰かいないのか?」
「そこに誰かいないか?」
「そこに誰かいないの…か……?」
呼び掛ける声が弱々しく掠れて、黙り込んだ。
もう本当に誰もいないのだろうか。外はどうなっているのだろう。
絶望に襲われ、その場に屈み込みそうになりながら、それでも一縷の望みを棄てられず、再び扉を叩いた。
自業自得。
こんな孤独の闇の空間に陥ってしまったのは、自分の保身のためにあいつを裏切ってからだ。自分を信頼し、自分だけを見詰め愛していたあいつ。
あいつは今はもう、この扉の向こうにすらいないのだろうか?
一番大切なものを失ってしまった時から、この扉が閉ざされた。
「誰かそこにいないのか?」
何度目か分からない呼び掛けが、また扉に跳ね返され闇に消えた。