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七夕

今年もまた
今日が来る・・・

―リリリン…
午前零時、ドアベルが鳴った。
そして一人の男が入ってくる。
鍵は開けておいてある・・・
今日は特別。
俺は男の姿を確認してふと笑った。
男もなんとなく眉を下げて笑い返して、カウンターに着いた。
「こんばんは。」
「・・・ピッタリだったね。」
「まだやってる?」
「バカ言え。もう終わってるよ。」
「ふふ、これ去年も言ったっけ。」
「・・・その前も、その前も聞いたよ・・・」
「・・・・・・」
最初の俺たちの会話は大抵2、3言交わした所で終わってしまう。
そうすると俺はこう言う、
「飲み物は?」
「・・・・いつもの。」
「かしこまりました。」
「・・・・・」
―シャカシャカシャカ
「今度はどこ行ってたの?」
シェーカーを振りながら尋ねた。
「ん、インドの方にね・・・」
「ぷはっ、インドって!」
「・・・笑わないでくれる?仕事なんだけど・・・」
笑いを堪えながらカクテルを注いだグラスを男に差し出す。
と、グラスの脚を抑えている俺の手に、男が自らの手を添えた。
意外と筋張って大きい・・・いつだったか気づいたことだ。
「そろそろ俺のこと認めてくれた?」
男の手は暖かい・・・いや、熱い・・・
「写真いっぱい撮れた?」
わざと逸らした。
男も分かっているのだろう、ふと仕様がない顔をして、
「いっぱい撮ったよ、いっぱいね。」
「・・・ちゃんと買ってるよ、写真集。」
「そっか・・・よかった・・・あなたに見てもらわないと、意味ないから・・・」
「・・・・」

いつから始まったのか・・・
俺たちが逢うのは七夕のこの日だけになった。
「あ、短冊書いてきたよ。」
ク、とカクテルを飲み干して男が言うと、俺たちの別れが近いことを知る。
逢瀬の時間は短い・・・
「俺も書いといた。」
願いはいつも

『来年も逢えますように。』

書いた言葉は、あの星にだったか、
俺たちにだったか・・・・