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恋のプロセス

空きっ腹で部屋に帰ると、食料がなんにもなかった。外は土砂降り。
「おい…じゃんけんで負けたほうが買い出しな。」
俺は窓際で何か熱心に読んでる従弟に、いやいや声をかけた。当然のように返事がない。
「何読んでんだよ。」
俺が覗き込もうとすると奴は無言で、読んでいたものを俺との対角線上に遠ざける、が…
しょ、少女漫画…見るんじゃなかった…
「例えばの話だが」
奴が無駄に重苦しく口を開く。いつものことなんだが、目線は明後日のほうをむいている。
「…今日みたいな雨の日にだ。もし俺が道端で捨てられている子猫を抱き上げて、優しく
話しかけている場面を目撃したとしたらどう思う?」
…。
「キモいと思う。」
「…もし学校が終わったら大雨で、朝傘を持って出るのを忘れたからどうやって帰ろうか
迷っているところに俺が現れて、無言で傘を渡して自分はそのまま雨の中を走って去って
行ったとしたら、どうする。」
「怖すぎるからおばさんに相談する。」

「お前は本当に最悪だな!!」
「俺なんか悪かったか!?」
認めたくもない話だが、ここ数日こいつが以前に増しておかしい理由が、ようやく俺にもわ
かりつつあった。どうやらこいつは先週末一緒に出かけた俺の親友に一目惚れしたらしいのだ。
「ふざけんなよ…いいか、よく聞け。…あいつは男だ!」
「……」
「あのなぁ…」
RRRRRRR
俺の携帯が鳴る。
『もしもし、今江古田なんだけどさぁ、今日秋んち泊まっちゃダメ?買い物とかあったら
してくからさ。』
…なんてタイミングだ。
「ダメなわけない!!5分で迎えに行くから南口の本屋で待っててくれ!」
奴は光の速さで俺の携帯を奪って通話口に向かってそう叫ぶと、猛烈な勢いで玄関から飛び
出していった。
『…もしもし秋?今のシロウ君?』
「あ、ああ。わりぃ、なんかあいつ、もうそっち行っちゃった…んだけど…」
逃げてくれ清瀬、って言うべきなのか…?
『あははは、シロウ君て何か、かっこいいのにおもしろいよね。…仲良くなれるといいなぁ。』

もしかして、俺の知らないうちに、何かが初期段階に突入しているのだろうか。