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口紅

鏡に映った俺の顔。
決して柔らかくはない顔の輪郭と、一重の細い目。
適当に短く切られた真っ黒な髪に、筋の浮く太い首。
そして、薄い唇。似合わない紅色。
色彩を増やしても男の顔でしかなく、溜息を吐く。

ヤツの好みは、丸い頬に大きな目を輝かせた少女だった。
ふわふわした長い茶色の髪に絡まるネックレスを、苦労して取っていたのも覚えている。
小首を傾げる少女の首は折れそうなほど華奢で、ぽってりとした唇がさくらんぼうのようだった。

昨日、ヤツは俺とは正反対のその少女に振られた。
慰める言葉は掛けられなかった。
浅ましい本音が透けて見えてしまいそうだったから。

鏡に映る醜い姿に、我に返ってティッシュの箱を引き寄せる。
だけど拭っても拭ってもティッシュは色を吸わない。
ただ、溢れた涙だけが染めていった。