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受で夫・攻で妻

剣道2段、弓道5段、柔道3段、合気道免許皆伝のこの俺は、
ずっと怖いものなんてないと思っていた。
そりゃ苦手なものはあったさ。
香水くさい女だのちゃらちゃらした男だの、
それでも怖いと思ったことはない。
あいつに出会うまでは。

「あっなったァ~!お帰りなさーい!」
寮に帰ると野太い声で色めいた声をあげ
エプロン姿のガタイのいい男が突進してきた。
それをさっと交わし、首根っこに一撃を与える。
「いったぁい!なにすんのよダーリン!」
ダーリンという単語に不快感を覚え、
眉間に皺を寄せて睨みつける。
そんなことは全く気にしてない様子で腕を組んできた。
「ご飯にする?お風呂にする?それとも」
「風呂」
最後まで言わせるものか、と遮った。
たまたま不運にも同じ寮の部屋になったこいつは女装癖の持ち主で、
それを俺が偶然、女にしてはずいぶん大きめのワンピースを
発見してしまったことからだった。
こいつは勿論あせり、
いいわけの常套句を並べたわけだったが、
それはお粗末なもので
自らの性癖をより露見させてしまうものだった。
それを誰に言うでもなく蔑むわけでも嫌悪するわけでもなく
ただ今まで通りの生活をしていただけで
俺はよっぽど気に入られたらしい。
風呂からでると慎ましやかに飯を盛っているこいつがいた。
沢山食べてね、とにっこりと微笑む。
確かにこいつの作る飯は旨いし風呂の温度も丁度いい。
俺が疲れているときはかいがいしくマッサージだの
栄養ドリンクだのと労わってくれ、
こんな関係が続いても構わないかもしれない、
と思ってしまうときもある。
俺たちの寮の部屋は元来二段ベッドなっているのだが、
あろうことかこいつはそれを解体し
作りなおしてダブルベッドにしてしまった。
最初は嫌がって床に寝ていたのだったが
あまりに寝痛がひどく結局一緒に寝るようになってしまった。
ここまではいい。
ここまでは構わない。
問題なのは毎晩毎晩俺が寝付いた後、
こいつが息を荒立て上にのしかかってくることだった。
その度にこいつの殺気を感知し、
今まで培ってきた技を駆使してねじ伏せているのだが、
更なる問題は夜な夜な俺と格闘することで
必然的にそして確実にこいつは鍛え上げられ
最近では負かすのがいっぱいいっぱいになってきていることである。

ただ、俺が本当に怖いのはこのことではなく
焼き魚をほおばる俺を愛おしそうに見つめ、
おいしい?とにこやかに聞いてくる
このガタイのいい男を若干可愛いと思っている
俺自身の感情であった。