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今夜すべてがパーに

「オーケー、俺深呼吸。俺今夜超頑張っちゃう。」
そういいながら彼は愛しい彼のために
今まで培ってきた全てをぶち壊しても構わないと決意を決め
身を乗り出しベランダからその隣のベランダへ
まるで羽ばたく鷹のように飛ぼうとしたが
しかしそれはペンギンのごとく落下し
べりゃりという間抜けな音と共に落下したのであった。

事の発端は三日前。
愛しい彼と落下した彼は無二の親友であり
古き我が家を隣り合わせにした幼馴染であり、
なんでも話せてしまう兄弟のようなものであり、
ということを、お互いに自覚し認めあっていたのであったが
落下し今にも泣きそうな彼の持っている一物は
どうしても学校のどんな才色兼備の乙女達を見ても反応せず
こともあろうに親友で幼馴染で兄弟のような彼の夢を見た瞬間に
初めて自分が男になったという事件からだった。
今にも泣きそうになりながら立ち上がった彼は
自分自身が男が好きであるということの事実と
なにより初めて愛しい彼に対しての秘密ができてしまったという
焦燥感や不安、寂寥感にかられ
単純な性分のせいもあり、持つ気持ちは0か100かの
きっぱりした依存症であるということもあり、
成程これは伝えなければと覚悟を決めた次第であった。
「またベランダから落下したのか君。馬鹿なやつ。」
さてここで愛しい彼がベランダから登場。決心のにぶるチキンな彼。
けれどまるでジュリエットのようだよ俺ロミオ、
なんて馬鹿馬鹿しいことを考えながら伝えたい言葉を羅列してみたが
どうにもこうにもうまくいかず、
元来彼はいざ本番となると熱をだしたりお腹が痛くなってしまう性分だったので
曇った夜空を見もせず空が綺麗だ星が美しいだのと戯言を言い
それから口をぐっと紡ぎ愛しい彼が決して視界に入ることはない地面を見ながら
ぽろぽろと涙をこぼすのであった。

先に口を開いたのはジュリエット。
「ああ、遠いから涙を拭くことができやしないな。」
そういうとハンカチを部屋から持ってきて餅撒きの餅のようにぺいっとなげると
それが君に渡す最後のハンカチだ、と肘をつき手を顎に当てながら言った後
これでもう終わったなと呟いて部屋へと消えた。

結論からいうと結局覚悟を決めていたのは愛しい彼のほうで
そのハンカチは随分前から用意していた物の様で
今までの思いが綴られており
それはぱっとみると長く、読んでみると短くあっけなく、
簡潔でありそれでいて情熱的でそれでも罪悪感や自嘲も入っているものであった。

さて、愛しい彼のその十分の一も覚悟をしておらず
重圧に苛まれる事もなかったこの能天気な彼が
そのハンカチを読んでニマァと笑ったのは言うこともない。