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ツンデレ攻め×ツンデレ受け

「あ…の、こんなとこにずっといると日射病になる……」

 夏日の日差し照りつける第二校舎の屋上に、そいつは午前中からずっと一人でいた。
向かいの、第一校舎の生徒会室からはこの屋上の一角が見えて、昼休みの間も「あの男子
生徒はこのくそ暑いのに屋上で何をしてるんだ」と話題になった。
「嶋ノ辺、あいつここに連れてこい。俺一応説教しなきゃならないかも。同じ一年だろ」
村上先輩は、よく横柄な物言いをするけどそれは誰にも媚びないからで、本当は気さくで
後輩にも威張ったりしない人望の厚い生徒会長で、僕はこの人のおかげで生徒会にも学校
にも気後れせずに居場所を作ることができた。……だから、嫌だったけど村上先輩の頼み
だから、僕は屋上にいるそいつを呼びにいった。

 屋上の扉を開けると、熱気と光線が額を打つように襲ってきて、それだけで立ち眩みが
した。……こんなところにずっといて大丈夫なやつが、いるのかよ。
―同じクラスの市。市は、確かに僕より背は高いし体つきもしっかりしているけど、でも
こういう事ってそういう問題じゃないっていうか……現に壁にもたれて足を投げ出した格
好でなんかぐったりしている。
「市、そんなとこにずっといるなよ、って村上生徒会長が。一緒に生徒会室まで来いっ
て。……聞いてるか?」
「俺がどこにいようと、何も言われる筋合いない、だろ。村上にもお前にも」
……こいつは。また、わざと僕の癇に障る言い方を選んで、生徒会長を呼び捨てにした。
僕と市は、小学校のほんの一時期同じ塾に通っていた事があって、短い間だけど気が合ってかなり仲良くしていた。だから高校では本当なら久しぶりの再開で、むしろ僕はとても
喜んでいた。なのに、市は僕が話しかけてもよそよそしかったし、それどころか僕に対してだけ、やたらと感じの悪い態度を取り続けた。……はっきりいって無愛想で何考えてる
かわからない市はクラスでも浮いていて、一方僕は中学の先輩でもある村上先輩のお陰で
二、三年生ともいい関係が築けてるし、こんな奴の事は、気にかけなければそれでいい。
気にかけなければ、それでいいんだ。
「……顔怖ぇえ」
市が、いつの間にか立ち上がって僕の前に日陰を作っていた。僕は……眉間に思いっきり
しわを寄せていた。
「じゃあ、いいよ、知らねぇよ。勝手に病気にでもダブりにでもなれもう。じゃあな」
「待て」
僕は扉のほうへ早足で移動しようとしたが、市に肩をつかまれた。カッとして振りほどく
と、今度は腕をつかまれて、抱き寄せられた。
「な……」
「あのさ、俺たいていずっとここにいるんだけど、何が見えると思う」
「はっ……なせよっ、このばか!!」
「……お前の大好きな村上先輩がさぁ、見えるんだよな。よくまあ生徒会室で、とっかえ
ひっかえ」
最初、何を言っているのかわからなかったが、市の言わんとする事が飲み込めた時、僕は
触れそうな位置にある奴の顔を、はっと見つめた。ふざけたような口調と裏腹な真剣な眼
差しと目が合って、思わず息をのむ。しかし怒りは、次の瞬間込み上げてきた。
「ふざけんなよお前……いい加減な事、お前に、あの人の事そんな風に言う権利……!」
「ふざけてんのはお前のほうだろ?一生懸命あんなエロ会長の機嫌伺って、この俺にまで
あの野郎の命令なんかのこのこ伝えにきやがって」
―俺がどれだけ苛ついてるか、教えてやろうか?
うるさい。黙れ。じゃあお前は知ってるのかよ?お前に冷たくされて僕がどれだけ傷付い
たか。ばかはお前だ。お前が悪いんだ。
だけど熱い屋上の床に押し付けられて、茹ったような温度の腕で締め付けられて、僕はシャツにしがみつくのが精一杯で、言葉を伝える事はできなかった。