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一万円札×千円札+五千円札

世の中もまだまだ捨てたもんじゃないと、親友の清瀬と一緒にいるとよく思う。
なんせ道端で泣いてる迷子の子供に、わざわざこっちから話しかけて、なだめすかして、
ようやく聞き出した宿泊先のホテルの名前を頼りに保護者の元に送り届けてやるようなやつ。
今も子供のおばあちゃんからお礼を言われまくって、恐縮して逆にぺこぺこ頭を下げている。
俺一人だったら絶対あんなことしねぇ、えらいなぁ清瀬。と、ここまではまあいつもどおり
なのだが、今日はとなりにもう一人、絶対あんなことしないやつがいるのだった。
「…お前なに、なんかプルプルしてんの…キモイんだけど。」
「…黙れ。」
同居してる従弟のシロウ。無口で無愛想でアホで足が臭くて何考えてるかわからんやつ。
大学の先輩がやってる劇団の公演チケットを大量にさばかされて、余りを身内で消化するべく
しかたなく誘って今日は一緒に出かけてるわけだが、本来ならこんな不審者と外でまで顔
付き合わせていたくはない…。ちなみに清瀬は今日こいつと初めて会ったのだが、こんなやつ
相手でさえやっぱり分け隔てなく明るく接してのけた。ほんと、えらいなぁ清瀬。
「そんなこと言わずに、受け取ってちょうだいな。いいじゃないの、お小遣いだと思って。」
「いえ、ほんとにそんな…!いただけません、お気持ちだけで十分ですので!」
「まあまあ、若い子がそんな、年寄りに遠慮なんかするものじゃありませんよ。本当に
気持ちだけなんですからもらってちょうだい。これで何か三人でおやつでも食べて、ね!」
何だかいつの間にか話がややこしくなってたみたいだ。おばあちゃんはティッシュペーパーで
キレイに包んだ"お小遣い"を、ただぼーっと見てただけの俺とシロウにも一つづつ渡し、
最後に困りきってる清瀬に無理矢理持たせると、お辞儀をしてそそくさと帰っていった。
「はぁ……なんか、かえって悪いことしちゃった気がする…。」
「いや、そんなことは…」
「そんなこと絶対にない!!」
…な、なんだコイツ?俺の言葉を遮って突然大声出したかと思うと、俺を押しのけて清瀬の
両肩を掴んでいる。
「君の優しさがあの子供とおばあさんの幸せを守ったんだ…これはそれに対するお礼の気持ち
を形にしたものにすぎない。君は素晴しい事をしたんだ。誇っていい。」
「そ、そんな…。うん、でも…ありがとう!優しいんだね、シロウ君て。」
あ、またプルプルしてる…ほんときもいなこいつ…。
気を取り直して、清瀬がティッシュペーパーの包みを開ける。中から出てきた千円札に、
安心したように笑顔で
「よかったね、じゃあ帰りはこれで、歩きじゃなくてバスで帰ろうか!」
と言って俺たちのほうを振り向いた清瀬がおかしな声を上げたのも無理はない。
俺の包みの中には五千円札、シロウのの中には一万円札が入っていたのだ。
「…アバウトなばあちゃんだなー。ま、もうけたんだからいいじゃん!」
開いた口が塞がらない清瀬に、俺は精一杯の言葉をかけた。
「お前死ね。…これは全部清瀬君のものだ。」
「ふざけんな、なんっなんださっきからてめぇは!!お前が死ね!」
「…いちまんろくせんえん…家族5人で高いお寿司が食べられる……」

とりあえず、いいことすればいいことが帰ってくるって話…でいいんだよな?