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ヒーローショーの舞台裏

「ぐぁ…暑ィ……地獄だな、真夏のヒーローショーはよ…」
 身体のラインをぴったりと浮き上がらせる真っ赤な全身タイツ風の衣装を身につけてぼやく彼は、正義の味方だ。
「あー…だりィ……」
 控え室の椅子にふんぞり返って煙草をふかしている姿は、ちびっこたちの憧れる本物のヒーローからは程遠いものだが……
 そんな黒田の様子を笑い混じりに眺めながら、羽根木は自分の衣装に着替える。
全身を覆う黒い皮膚、頭には恐ろしげな紋様の入ったマスク。
仕上げに黒いマントを羽織れば、泣く子も黙る宇宙怪人の出来上がりだ。
 様子を見にきた係員が、そろそろ開始時刻ですと告げる。
「おい、これが終わったら付き合えよ」
 煙草を喫い終えて頭からマスクをかぶった黒田が、羽根木の隣に立って耳打ちしてくる。
「いいよ」
 舞台からは、ショーの始まりを告げる司会の声と子供らの歓声が聞こえてくる。
 鏡でもう一度全身をチェックしてから、羽根木は舞台上手へと向かう。
 ――ショーを観に来る誰も知らない。
 舞台では羽根木演じる怪人を華麗な技で地に這わせる黒田が、現実の世界ではどんな痴態を見せるかを。
 黒田の足技に合わせて地面に倒れ込み、彼を仰いで惨めに悶える演技を続けながら、マスクの下で羽根木はほくそえむ。
 さあ、今夜はどんなふうに虐めてやろうか。