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好きなものは最初に食べる派×好きなものは最後に食べる派

「俺、実は童貞なんですよ」
目の前の友人の発言を聞いて、俺は里芋の煮っ転がしを落としてしまった。
「え、だって、お前、彼女いたじゃん。リサ?ちゃん?あのことはどうしたの?」
「嫌いじゃなかったけど、あの子のこと好きになれなかったんだよね。昨日別れたよ」
俺は何もない顔して、平静を装って、落とした煮物を口に入れる。味?そんなものはわからない。苦い気がした。
「でさあ、改めてお前に言いたいことあるんだよね」
そいつは俺の作ったたまねぎの味噌汁を飲み干して、真っ直ぐ俺を見据えた。
「お前のこと好きだよ。ずっと、これからも、永遠に。だって幼馴染暦20年だけど、嫌いになるどころか、好きばっかり積もるもん」
鯵の干物が上手にほぐせない。ぼろぼろ、ぼろぼろ、と無意味に身をほじくるだけだ。
「なあ、俺と付き合えよ」
「信じられねえ・・・一体なにを言ってんだよ・・・つか、お前もう干物食っちゃったの」
「食ったよ。だって、好きなもんは一番に食べたいじゃん。俺の一番は好きなやつにささげたいんだよ。おまえこそなに、何でそんなほじくってんのに干物一口も食べないの」
「俺、・・・好きなものは最後にたらふく食って、幸福感味わいたいから、」
好物を最後に食って、ああやっぱり俺はこれが好きだなあ。これが最高だよなあ。やっぱり譲れないよなあ。そう思いながら食事も、こいつとの関係も、終わらせたいのだ。
「知ってる。お前が最後にとっておく癖、ずっと変わんないな」
ずいっと俺に顔を寄せる。整った綺麗な顔だ。一体どれほどの女から告白されてきたのだろう。
「なあ、俺お前が好きだよ。こうやって真正面から告白するのも、童貞ささげたいと思うのも、一生ずっと一緒にいたいと思うのも、おまえが一番最初だよ」
煮物をもう一度口に入れる。味?わかるわけないだろう。今度はすっぱく感じた。
「・・・その答えさあ、お前が死ぬときに返事してもいい?」
「なんだそれ。・・・まあいいよ、それまでおまえも童貞でいてくれんなら。おまえのはじめてを俺にくれるなら、返事なんかいつだっていいよ」
まだ白飯が茶碗に残っている。鯵の干物にはまだ手をつけない。今一度、里芋の煮っ転がしに手をつける。
煮物はとても甘かった。