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うっかりさん

あたたかな雨が降っている

ほの明るい空

午後の図書室は生ぬるい



「先輩ってさぁー」
『ん?』
「アニキのこと好きなんでしょ?愛しちゃってるでしょ?」
『バカ』
薄い笑いを浮かべながら、子犬のような後輩の右頬をつねる。
「いーたいってば、だってさぁ…」
『だって、なに?』
「俺知ってんだ…アニキは…先輩を……」
『俺を…何?』
「…あ……なんでもない…」
『言いなさい』
「…………やだ、言いたくない」

そう言い残してぱたぱたと部屋を出て行く後姿を、複雑な想いで見送る。

兄なんか知るか、お前が好きだと

言ってしまえれば。

楽になれるのか…?


ぬるい空気に耐え切れず、窓を開けて空を見上げた。





あとにした図書室の扉を遠くから見つめ、溜息を一つ。

「俺ってダメだ…」

危なかった。
うっかり、兄の気持ちを伝えてしまうところだった。

「そんなんしちゃったら、両想いんなっちゃうじゃんかよ…」

先輩も。
兄をみているんだ。
俺の気持ちなんか…知らずに。

「…っくしょぉ…」

涙は出ない。ただ、不甲斐ない自分に腹が立つだけだ。

兄には敵わない。幼少の頃からそうだった。
だから先輩へのこの想いも、消さなければならないんだ。

だって敵わないから。叶わないから。

「…バッカみてぇ、俺」