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自己中×苦労性

「なおちゃん、俺さあ、やっぱ今日はこのまま海に行くべきだと思うんだよね」
「てめえふざけんなよ、今から学校だろうが」
高校に入って一番にできた友人が、コイツ、由紀だった。
隣りの席から、ねぇねぇなんて名前なの?と呼びかけられて、にこにこと可愛く笑って、
なおちゃんかあ、俺はね由紀っていうの、よろしくーなんて言われて、俺はそれにまんまと騙されたわけだが。
可愛いやつ、だなんて思ったことを、今は少し後悔している。
ひょろっとした長身にへらへらした雰囲気のとおり、コイツはどうもいつもふらふらしていて、
どこか抜けていて、それでもって自分勝手で、人のことっつーか主に俺のことをあまり考えていないような気がする。
由紀は毎回テストの度に、なおちゃんどうしよう俺留年しちゃう!と言って俺を頼ってきて、
俺のテスト勉強プランをめちゃくちゃにし、ギリギリで赤点をクリアしている。
俺はおかげでいつも学年十位以内を逃している。
怒ろうと思ったことも断ろうと思ったこともあるが、
なおちゃんと一緒のクラスじゃなくなっちゃうのは絶対に嫌なんだよね、と
めずらしく真剣な顔で問題に取り組む姿を見ていると、それができなくなってしまうのだった。
他にもコイツのせいで被った苦労は数え切れないほどあるのだが。
「学校っつってもあれじゃん、なおちゃん頭良いからいらないでしょー?えー?行きたくないよ俺ー」
二人乗りをしている自転車の後ろから、由紀が俺の頭をぺしぺしと軽く叩いてくる。
だいたい自転車だってそうだ。なんで俺がいつもコイツを後ろに乗せて登校してるんだ。
「なおちゃ~ん、俺春休み補習でほとんど潰れちゃうんだよ?だから今のうちに海見たいんだよ~」
「お前さ、いいかげんに……!」
「どうしても今日、なおちゃんと一緒に行きたいの。なおちゃんと一緒じゃなきゃ嫌なの……だめ?」
いいかげんにしろよ、そう言おうとした瞬間、由紀は俺の耳元に口を寄せて、
いつもからは想像できないような真面目で低い声で、そう呟いた。
惚れた弱みなんかじゃない。
そう自分に言い聞かせながら、自転車を海岸の方向へUターンさせた。
俺は馬鹿だ。