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学生やめて久しいので休みなのかどうかもう全然わからん。でも冬休みはクリスマス前後からだよなあ、まわし

「最近制服見ないなあ。もう学生は冬休みか?」
つり革に捕まって電車に揺られていると、どうしても眠気が襲ってくる。
まさか立って寝るわけにもいかない。そう思って隣に立っている同僚の三田に話題をふった。
「……でも、冬休みはクリスマス前後だよなあ?……クリスマスっていえば、お前予定決まった?」
三田は答えなかった。ただこちらを見ている気配だけがする。
かまわず口を動かす。俺は寝たくない。
三田が僅かに身じろぎした。かっちり着込んだコートが俺のよれよれのコートにぶつかる。
「……俺、今年はクリスマスにちゃんと家で過ごせるかも怪しいよ」
そろそろ日付が切り替わる電車の中は人がすし詰め状態なのに、いやに静かだ。
ひそひそ喋る俺の声と、どこかの誰かから音洩れしているらしい流行の曲と、電車の規則的な音だけが響く。
「……クリスマスかー」
憂鬱な気分でため息交じり呟くと、隣から声がした。
「一緒に居てやるよ」
言うまでもなく三田の声だったが、俺の脳がその言葉の意味を理解するまでにはかなりの時間が掛かった。
「は?」
「クリスマス」
横に立つ三田の顔をマジマジと見つめると、やはり俺を見ていたらしい奴と目が合った。
間抜けな声を上げた俺に、しれっと告げる。
「寂しいんだろう」
「忙しいんだよ」
何を言いやがるんだこの馬鹿は。俺が呆れて三田の無駄に整った顔を見ていると、ため息が聞こえた。
「お前がそうやって、やけくそみたいにべらべら話し出すときはいつもそうだ」
「なんでお前がそんなこと分かるんだよ」
「分かるんだよ」
そういうと三田は響いてきたアナウンスに口を噤んだ。
三田はそれを聞き終えると、俺の肩を掴んで内緒話のように耳元で言った。
「お前のこと好きだから分かる」
囁いて、三田は小さく笑った。
その滅多に拝めない笑顔に見惚れながらも、見透かされたような気がして俺は顔をゆがめる。
(大当たりだ。俺の口数が多くなるときは、寂しくて構って欲しいときだよ。お前にな!)
全てお見通しとばかりに得意げに笑う三田がムカついて、俺は慎重にヤツの脛を見極め、鋭く蹴り飛ばした。
人の純情を弄ぶんじゃない。