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アリとキリギリス

兄は何もできない。
針を持てば指を刺し、鍋を持てば髪を焦がす。

「あーもう、何やってんだよ。貸せよ」
「ごめん、ごめんねケンちゃん」

そのたび、僕は横から手を出す。
仕事を奪われ、兄は突っ立って泣くばかりだ。
兄は何もできない。


兄は何もできない。
人見知りの激しい兄は友達も作れない。
それどころかいじめの対象になっているようで、毎日どこかしらに傷を負って帰る。

「ケンちゃん、」
「いいから。腕、見せて」
「ごめんね、ごめんね」

血の滲む肘に消毒を吹き掛けると、兄はか細い悲鳴をあげて泣く。
兄は何もできない。


兄は何もできない。
僕がいないと何もできない。

「あ、ケンちゃん、ケンちゃ、あぁっ」

ただひたすら、僕の下で鳴くだけ。



君はキリギリス、僕は獰猛なアリ。