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マフラー

「マフラー、ほどけてますよ」
俺が指摘すると、先輩はマフラーに目をやりもせずに「うん」と頷いた。
「先輩、マフラー」
「わかってるよ」
先輩は煩そうに答えながら、前髪を引っ張るような仕草をする。
10分前はその手にはめていた手袋も今はしていない。
「わかってる」
「じゃあ、なおさないと…」
「無茶、言うなよ」
「でも」
だって、見るなと言ったのは先輩じゃないか。このままじゃどうしたって見えてしまう。
先輩は、引っ張った前髪をぐしゃりと握り締めた。
「なら、お前がなおせ」
「…!…はい」
俺はほとんど床につきそうなくらいに先輩の右肩から垂れ下がったマフラーの端を口にくわえた。
両手はふさがっていたから。
ゆっくりと立ちあがり、右肩から左の肩へ、先輩を抱きしめるようにマフラーを回してやる。
「これで、いい?先輩…」
「…ん」
「…続けても?」
「いい、けど、顔は見んな…見ないで、くれ」
先輩のくぐもった声が頭上から降ってくる。
見なくてもわかるよ、先輩。
「……っ」
「…あ、っ…」

口に含んだ先輩の熱。
マフラーなんかで隠し切れないくらい、熱くしてあげる。