あいびき

 そっと。
 壊さないように。
 この時間をただ、いとおしむように。
 あなたが側に居てくれるだけでよいのです。
 究極にはおそらく、あなたを見つめているだけでよかったのです。
 本当は許されない間柄であると知りつつも、私はあなたに望みました。
 望みは、受け入れられる事となりました。

 これは罰なのでしょうか。
 誰にも告げられないまま、あいびきは、幾年も続いております。
 臆病なまま。
 膚と膚を触れあわすことすらも出来ず。接吻のひとつもなく。
 ただあなたと語り交わすことだけが、唯一許される私の倖せであり。
 なによりの、不幸でもあるのです。

 臆病で醜いこの想いを、どうか。その聡いまなざしで今日こそ見抜いて下さい。
 硝子細工のように脆いつながりを深めることを許して下さい。
 その膚の匂いを、移すように交わることを。
 愛しき人よ。


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最終更新:2010年10月21日 18:09