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敬語眼鏡×アホの子

「俺、お前が殺されたら真っ先に疑われるかも」
「…何てこと言うんですか貴方は」

おとなしくテレビを見ているかと思えば彼は急にそんな脈略のないことを言ってきた。

「えー!だって火サス見てると考えない?自分が殺されたらーとか誰かが殺されたらーとかさ」

どうやら彼の中ではきちんと繋がっているらしいがこちらにはさっぱりだ。

「考えませんよ、そんな物騒なこと」
「マジで?俺なんか月のない夜に背後から襲われたときの為に、ダイイングメッセージまで考えてあるのに。」

この都会のド真ん中に住んでいて月のあるなしが襲われやすさに関係があるとは思えないのだが。
とはいえ、そんなことを言えば拗ねられるのは目に見えている。
だからと言って聞き流しても確実に拗ねる。ということで無難なところ。

「そんなものを考えるより、身を守る護身術でも習った方がいいんじゃないですか」
「そんなのミステリー好きがすることじゃないね!」

…ツッコミたいところは山ほどあるがどうやらこの質問以外は許されそうにない。
とはいえ、この質問にも ま と も な答えが返ってくるとは限らないが。

「どんなメッセージなんですか?」
「よくぞ聞いてくれたワトソン君!パソコンのキーボードのカナ文字配置のローマ字でメッセージ残す!もちろん自分の血で!!」

意外にもまともな答えが。
しかしなんてありきたりな。
そうは思っても口には出さない。出せば確実に…以下略。

「お前が犯人だったらP?か?T`<だな!」
「…前者はともかく、後者は絞れないんじゃないですか」
「…お前変換早くない?もしかしてダイイングメッセージ警戒してる?…ってことはもしかしてお前…!!」

彼には私の手元にあるものが見えないんだろうか。
いや、見えないんじゃなくて見てないんだな。火サスに夢中で。

「ご心配なく。今のところ、月のない夜に誰かの背後に立つ予定はありませんから」
「なんだー驚かすなよなー。この推理マニアの俺ばりに早く答えるもんだから、うっかり事件の臭いを嗅ぎとっちまうとこだったよ!」

事件の臭いはうっかり嗅ぎとるようなものではないというのはこの際置いておくとして。

「推理マニアだったんですか、貴方…?」
「当たり前だ!じゃなきゃ火サス毎週欠かさず見る上録画なんかするもんか!!」
「録画したのを見ている貴方を見た覚えはありませんけど」

彼は頭を少し傾げて考え始めた。
実際見ていないのだから考えても仕方がないとは思うが
彼が首を傾げると首に掛かっていた髪がさらりと横に流れ綺麗なうなじが見える
という発見をしてしまってはそれを遮る気には到底なれない。
眼福ご馳走様です。

「で、俺が疑われる理由何だと思う??」

結局さっきの答えを出すのはやめて最初の話に戻すことにしたらしい。
テレビに釘付けだった視線をようやくこちらに向け、目を輝かせてこちらの返答を待っている。
さっきのうなじもいいが、やはり彼がこちらを向いてくれている方が嬉しい。

「なんでしょうね。貴方といる時間が一番長いから、とかですか?」
「はずれー!答え知りたい?知りたいよな??」
「知りたいですね」
「あのなー正解は…指紋!」
「指紋?」

彼はこちらに両手を突き出しながらそう、指紋!と繰り返す。
つい誘われるように彼の両手に触れ、そっと握れば、きゅっと握り返してくれる。
なんて、幸せな時間なのだろう。

「殺人事件と言えば指紋!指紋と言えば眼鏡でしょう!!」

……話している内容はともかくとして。

「眼鏡って指紋残るじゃん。」
「ですが指紋というものは…」
「お前の眼鏡触る奴なんて俺とお前しかいないじゃん?だからさ、やっぱ確実に疑われるよなー」

彼は自分が何を言ったのかわかっているんだろうか。
こんな会話の中でこんなにくすぐったく嬉しい気持ちにさせられるとは。
指紋は見えないだけで触るだけで他にも残っているなんてこと教える気がなくなってしまった。

「……ここの、ツルのところを持って外せばいいんじゃないですか?そうすれば指紋つきませんよ」
「ああ、そっかー!いつもレンズのとこ持つから指紋つくんだよな!ここ持てばつかないかー」
「試しに外してみたらいかがですか?」
「うん!」

貴方がどんな時に私の眼鏡を外すかなんて、わかりきったことですよね?