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……なーんて、な!

「俺、死ぬんだ。あと半年持たないだろうって」
担ぎ込まれた病院のベッドにだらしなく寝転がったまま、俺はぽつりと呟いた。
不貞腐れたような、それでも無理に感情を押し殺したような低いその声が、室内を占領する。
ベッド脇に立ち呆ける奴の顔が、青ざめているだろう事が手に取るようにわかる。
「は? な、何言っちゃってんの。つまんないよ、その冗談……」
「冗談じゃねぇよ」
何とか平静を装うとする奴の声は、それでもやはり震えている。
あの意地っ張りは必死で泣くのを我慢しているのか、ぐすぐすっと鼻を啜る音が聞こえた。
「嘘、つくなよ。だって、お前みたいな馬鹿野郎は……殺しても死なないんだよ!」
その言葉に、俺は鉛みたいに重い体を持ち上げて上半身を起こした。
見上げる奴の顔は、予想通り鼻水と涙でべたべたで、普段の端正な顔立ちが噴出してしまうくらいに崩れていた。
その表情に思わずははっと声を上げて笑うと、俺は伸ばした腕で奴の腰をこちらに目いっぱい引き寄せる。
突然の行為に「へっ?」と戸惑いの悲鳴を漏らした奴の耳朶に向け、とびっきりの悪戯めいた笑みで告げる。
「……なーんて、な!」
「……はい?」
「馬っ鹿、お前マジで俺が死ぬとか思ってんの? この俺が? ありえねぇだろ」
豪快に笑い飛ばせば、あちらは羞恥と怒りで顔を真紅に染めている。
赤みの差した頬で、俺に向けて怒り心頭な視線を向ける。
「お前……死ね! 今すぐ死ね!」
「へぇ?俺みたいな馬鹿野郎は殺しても死なないんだろ? 違ぇの?」 
意地悪く問えば、ますます赤くなる奴の顔。そこに軽く口付けて、俺はなおも笑った。

――なんて、な。
俺だって、殺されりゃ死ぬんだよ。
今だって病気とかいう俺以上の馬鹿野郎に首絞められかけてんだよ。ヤバいんだよ。
余命半年とか意味不明なこと医者に言われて、どうしたらいいか分からないんだよ。
冷たくなって棺入ってからじゃ、もうさっきみたいに「なーんて、な。嘘でしたー」なんて、出来ねぇってのに。