※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

番人さん

「お通しするわけには参りません」
夜の闇に映える銀の短髪を冷たく光らせながら、その扉の前に立っていた
男はきっぱりと言い切った。
「いいじゃねえかよ。その扉の奥にある物が何なのか分かったら、すぐに
帰るからよ」
こげ茶色の癖毛を肩の上で揺らしながら、大柄な男が言う。しかし銀髪の
番人は微動だにしないまま、同じ言葉を繰り返した。
「お通しするわけには参りません」
「……ちっ、気難しい奴」
大柄な男は舌打ちをして、ポケットから煙草とライターを取り出した。やや
細身の煙草を口にくわえ、先端にライターで火を点けると、ゆっくりと煙を
吸う。
「じゃ、通してくれなくていいからよ、この奥に何があるのか教えてくれ」
「……それは」
番人は目を伏せた。大柄な男は煙草をくわえたまま、番人の返答を待つ。
「知っていたとしても、教えられません。……それに、私もこの扉の奥に
何があるのか分からないのです」

「なんだと?」
男は目を見開いた。それならば、この番人は何故祠の扉の前に立ち続けてい
るのか。
「……私には、これしか出来ることがないのです。物心ついたときには、す
でにこの扉の前に立っていました。私には家族も友人もありません。そして
何の能力もありません。だから私に出来るのは、扉の前に立ち続け、この祠
を守ることだけです」
男の心を見抜いたように番人が言った。男はしばしの沈黙の後、煙草を足
で潰しながら小さく呟いた。
「……そんならお前さんは、自分の意味を見つけるためにそこに立ってるって
こったな」
「自分の意味?」
今度は番人が目を見開く番だった。大柄な男は自分よりも頭1つ小さな番人を
見てニヤリと笑い、背を向けた。
「……また近い内に来てやるよ」
「お通しするわけには参りません」
「通してもらおうなんざ思ってねえ」
男は振り返り、片目をつぶりながら番人に告げた。
「扉の奥にある物じゃなくて、お前に興味がわいたんだよ」