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東/京/三/菱×U/F/J

また同じ会社になるんだな。
俺は胸の中に残る槇田の面影に話し掛けた。
男同士の社内恋愛なんて洒落にもならない。しかし、俺と槇田は入社以来5年半、躰の関係を続けていた。
最初に見染めたのはどちらが先だったのか分からない、それ程すぐに俺たちは互いに惹かれ合い、恋に堕ちた。
最初は営業で一緒になった帰り道、酒でもと誘われてふたりで居酒屋に行った。語り合うと言うよりも見詰め合いながら杯を重ねた。
そうして何度かふたりだけで酒を呑みに行く内に、いつもよりも幾分杯を重ね過ぎた槇田が、何度か俺の名を呼んでは黙り込み、なんとも言えない悩まし気な視線を投げつけ、堪えきれないという風に席を立って、帰ろうとした。俺は急いで会計を済ませると、先に店を出た槇田を追い掛け、もう一軒付き合わないと帰さないと無理を言ってボックスに仕切られた座敷のある店に誘い込み、酔い潰れた槇田の耳元に、
「好きだ。」
と、囁いた。
本当は告白などなくても互いに気持は分かっていた。それでも、互いの気持を解放するためにはそれだけのきっかけが必要だった。
俺は肩に持たれかかった槇田の躰を支え、髪を撫でながら、また「好きだ」と囁いた。
肩にもたれた槇田の頬が涙に濡れるのを拭い、そっと抱き寄せ、軽く額に口付けると、そのまま肩を抱いて会計を済ませ、アパートへ連れ帰った。


そうして何度か躰を繋げ合う内に、俺たちは次第に見境を忘れ無用心になった。
最初はこっそりと会社から遠く離れた場所で落ち合い、ホテルへ行くだけだったのが、互いの鍵を持ち合い、毎日のように夜を共にするようになった。
そんな俺たちの関係に敏感な女性上司が気付かないはずはなく、ある時、俺のアパートの鍵を開けようとする槇田の肩を後ろから叩いて、ふたりの関係を問い正し、それをネタに親戚の娘との結婚を槇田に迫った。槇田がそれを断ると、関西の支社に追いやった。
耐えられなくなった槇田は遂に会社を辞めた。


そんな槇田が再就職した先は、やはり同じ業種で、少し規模の小さな銀行だった。


このところの銀行再編、合併の嵐の中では何が起こってもおかしくはなかったが、他行と比べ比較的安定していた我社が、槇田の再就職した先の銀行を抱え込むとは正直思っていなかった。
あれから3年経った。
あの時の女性上司は今はもう配属が変わって、当時の経緯を知る者も今はもう誰もいない。

あれから何度かメールのやりとりはしていたが、辛くなって途絶え勝ちになり、俺は携帯番号とアドレスを変更した。


どうしているだろう。また同じ会社になると聞いてあいつはどう思っているだろうか。


ひとづてに、槇田は相変わらず独身のままだと聞いた。
俺ものらりくらりと見合い話をはぐらかしては、相変わらず独身を続けている。


久しぶりに会いたい。
俺はずっと封印していた槇田の携帯の番号を鳴らした。

掛らないかと思っていた電話は通じ、もしもしと懐かしい声が聞こえてきた。槇田の声は見慣れぬ番号に幾分不審そうだ。
「会いたい。」
「……馬鹿野郎!」
「会いたい。」
電話の向こうから嗚咽の声が聞こえてきた。