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ごめん、あたし男なの

「ごめんね、あたし男なの」
困ったように微笑んで、それでも決して視線は逸らさずに静かにそう先輩は呟いた。
手入れの行き届いた髪、違和感を感じさせない化粧で整えられた顔、タイトスカートからのぞく黒のストッキングに包まれた長い脚。
もちろん化粧が無くてもとびきりの美人だということは知っている。
大学構内では『いつもスッピンなのよね』と笑っていたから。
華やかな外見を裏切るような女性にしては低めのハスキーボイスも、並んだとき若干自分の方が背が低いことも気に留めていられないくらい好きになっていた。
「騙していたみたいで、本当に悪かったと思っているわ」
女性だと思っていた相手を映画に誘って、それから晩ご飯を一緒に食べて。
今どきドラマでも中々見ないだろというようなお決まりのデートコースを辿って意を決して告白をしたからか、今だ目の前で喋り続けてくれている言葉がうまく頭に入らない。
 その様子をどう思ったのか先輩はゆっくりと視線を下に向けた。
「気持ち悪い、って思ってくれても良いから。縁を切りたいって言うなら、そうするわ」
「そ、そんなこと、言わないでくださいっ」
対して考えもせずに口から飛び出した言葉はかっこわるくどもっていた。
でも、自分がかっこ悪かろうがなんだろうがなんでも良かった。先輩が悲しそうな声で話すのを止めたかった。
外見で好きになったわけじゃない。いつも周りから一歩引いたところでにっこりと微笑んで、さりげない気遣いやフォローができる先輩を尊敬している。
敬愛していたのがいつのまにか恋に変わっていただけだ。どんな先輩でも好きなことには変わりないのだから、どうかそんな自分を貶めるようなことを言わないでほしい。
そんなことを回らない舌と少ない脳みそを総動員させながら必死になって伝えた。
最初は「フォローしてくれてありがとう」と言って苦笑していたけれど、自分の本気が伝わったのか頬を染めて、口をつぐんだ。
「先輩のこと、本当に好きなんです。あの、付き合ってほしいっていう意味でです」
何度も繰り返した言葉を再度先輩に伝えた。
「……あたしで本とに良いなら、付き合おうか?」
聞いてるのはこっちなのに、最終的な決定権を委ねられる。
自分のことを、少しでも付き合えると思うような好意があるなら、付き合って欲しいと先輩を抱きしめた。


付き合ってみてから色々と悩みが増えた。
それの倍くらい、幸せなことがるからそれも良いとは思うのだけれど。
「せんぱい!!無理、ちょ、下は無理!!本当今日こそは逆で!」
「大丈夫、いつもそう言ってるけどちゃーんと身体は反応してるでしょ?」
女性の格好をしているから、きっと先輩はそっちの人なんだろうと勝手に勘違いしていた。
勘違いして、『あれ?』と思っている間に自分たちの上下関係は決まっていた。
「あたし、きみの気持ちよさそうな顔見てるだけでイっちゃいそうになるのよ」
そう言われると先輩の身体を押しやる手の力も緩んでしまう。
「愛してるわ」
耳元で囁かれ、促されるままに先輩の首に腕をまわした。