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元カレの葬式で元カレの今カレと初対面

その子は冷めかけたコンビニのスパゲティーを困ったようにつついていた。
フォークに巻きつけるのがとてもへたくそで、それを自分に見せまいとしているようだった。
しかし見れば見るほど、自分とは正反対の容姿だ。
少しだらしのない格好をしていたが、気の強そうな黒目がちの目に健康に焼けた肌をして、活発で利発そうだった。
「俺、この人が中嶋さんなんだなって見てすぐ分かりましたよ」
急に話しかけられて、中嶋は皿から目を上げた。
けれどその子の方は俯いたまま、相変わらず皿の中のスパゲティーをかき回していた。
「だって、色白で、目が垂れてて、口が小さくて、とってもきれいな人だったって……」
会ったばかりのその子の口から、ふいに自分のことが話され始めたのを、中嶋は驚いて聞いていた。
そんな中嶋の態度に気付かないまま、その子――達也が死ぬ前まで付き合っていた青年は話し続けた。
「散々聞いてたんです、俺。ひどいんですよ達也さん。ずーっと中嶋さんの話ばっかり俺にするんですよ。
中嶋さんはどういう風にきれいで、優しくて、色っぽかったかって話しかしないんですよ。ホントに。
だから達也さんきっと、絶対まだ中嶋さんのこと好きだったんすよ。
俺ずーっと会ったこともない中嶋さんに嫉妬してて、恨んでて……会ったこともないのに。
中嶋さんなんて、この世にいなければ良かったのにって思ってて」
そこまで言って、青年はようやく中嶋の困惑した顔に気付いて、慌てて謝った。
「ごめんなさい」
「あ、そうじゃないんだ」
謝られてはっと我に返って、中嶋は呟いた。
「そうだったんだと思って……」
青年の話を聞いて初めて腑に落ちたことがあって、中嶋は呆然としていたのだった。
何年も付き合って分からなかったことが、こんな会ったばかりの青年と話したことで分かるとは思ってもみないことだった。
「俺と付き合ってるときは、そのとき浮気してた女の子が可愛いって話しかしなかったんだよ」
今度は青年の方が驚いた顔をする番だった。
「達也は、すごくひねくれてただろ?」
それを聞いて、その子はぱっと目を輝かせた。けれどすぐに中嶋を見て、申し訳なさそうに、悲しそうに眉を寄せた。
きっと達也はこの子のことをとても好きだったに違いないと、それを見て中嶋は静かな気持ちで思った。
そのことが中嶋には、多分この世で一番よく分かるのだった。