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踏み踏みしてほしーの

「ひー、くたびれたー足パンパン」
商店街のお祭りの手伝いで、朝から準備にバタバタし、夕方から夜までずっと純也と二人で焼きそばを焼いた。
部屋に入るなり、純也はラグの上に寝転がった。
立ちっぱなしだったから本当に足がパンパンだ。
アルコールも適度に入ってるから余計だよな。
「なあ、彰司あれやってよ、踏み踏み」
「えー俺も疲れてるんだけど。だいたい、シャワー浴びに来ただけだろ」
「いいじゃん、お願い。プロのお前に踏み踏みしてほしーのよ」
俺の返事を聞く前に、横向きになって上の脚を前に出す、いわゆるシムス位になると、純也は俺の顔を見上げて、お願いっと言った。
立ち上がると、「しょーがねーなー」と言いながら片足で立ち、もう片方を純也の内股の付け根におろす。
足の裏全体で、内転筋にゆっくりと体重をかけ、膝の方へ移動してゆく。
確かにスジがパンパンになっている。
「ひーーー痛ぇーー」
「違うだろ、気持ちいいだろ」
「ひ~、痛きもちいいー」
「そうそう」
これはどう言うわけか、膝に近い方が痛みが強い。どんなに軽く踏んでも、のたうち回る人がいるくらいだ。
そっと純也の顔を見ると、目をつぶって眉を寄せ、何とも言えない顔で耐えていた。
「痛いーーけど気持ちいいー」
「お前が言うとなんかエロいな」
「ばっか彰司、ほんとに痛いんだぞ」
「知ってるよ、仕事ですから。はい反対」
ううーと呻きながら純也が向きを変える。
俺も足を変えて同じように内転筋に軽く体重をかける。
「あ、こっちはそうでもない。あんまり痛くないわ」
「お前、片方の足に体重かけすぎ」
「わかってるんだけどさー、軸足があるんだって」
純也は商店街の布団屋さんの息子で、貸し布団を車に積む時に、無意識にいつも同じ側で踏ん張る。
それで一度腰を痛めた。

サッカーをやっていた純也には結構な痛手で、それで俺はスポーツ整体を仕事にするようになったのだ。
「マッサージもしてやろうか、ついでに」
「ええ? マジ? ラッキー、すまないねえ、彰司も疲れてるのに」
「ま、あとで身体で返してもらいますけど」
「お前が言うとエロいわね」
「マネしないでくれる?」
軽口を叩きながら、ラグに俯せにさせ、仕事の三割程度の軽さでマッサージをしていく。
肩、背中、腰。
引き締まった固い筋肉の中のコリを見つけ、ほぐす。
この仕事をするようになって、わざわざ理由付けする必要なく純也に触れられることに気が付いた。
無防備に俺の前に横たわる純也。
俺が純也を好きなように、純也も俺を特別な目で見てくれているといい、と思うことがある。
90%ない、とわかっているけども、時々、もしかして、と思うことはある。
うぬぼれ、あるいは妄想。たぶんそうだ。わかってる。
だから、こうやって純也に触れる男は俺一人。そう思うことで十分だ。
「おー、気持ちいいー。彰司、サイコー」
半分寝ているような声で、純也が囁く。
寝ろ。寝てしまえ。
「バカ、寝るなよ。シャワー浴びたら祭りの打ち上げ行くんだろうが。皆待ってんぞ」
心とは裏腹の言葉をかける。
いいよ、寝ちゃえよ。
そのまま朝までここにいろよ。そうしたら、俺はお前をひとりじめ出来るから。
「ん~…」
純也の息が穏やかになり、規則正しくなったのを見計らって、俺は立ち上がり、打ち上げに行けなくなった旨のメールを一本打つと、部屋の電気を消した。